世界の抹茶トレンド──その市場規模、そして覇権争いまで徹底解説

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世界の抹茶消費動向:現時点での「推測ランキング」を探る

鮮やかな緑、独特の風味、そして秘められた健康パワー――日本の伝統的なお茶である抹茶は、今や国境を越え、世界中の人々を魅了しています。その市場はまさに飛躍的な成長期にあり、ある市場調査会社の予測によれば、世界の抹茶市場は2023年の約6,000億円(約38.5億ドル)から、2028年には約1兆円(約66.3億ドル)規模に達すると見込まれています(MarketsandMarkets調べ)。これは、今後数年で市場が約2倍に拡大する可能性を示しており、抹茶が単なる飲み物ではなく、グローバルな一大産業へと進化していることを物語っています。

しかし、これほど大きな成長を遂げているにもかかわらず、「世界の抹茶消費量ランキング」といった明確な国別データは、残念ながら公には発表されていません。

これには「抹茶」の定義が国によって異なり、単なる茶葉を粉砕した「粉茶」の取扱いが違うためです。

そこで今回は、この急拡大する市場から粉茶を除き、純粋にどの国々が抹茶消費を牽引しているのか、公表・公開されている様々な情報や市場の動向から、現時点での抹茶消費の「推測ランキング」を探ってみたいと思います。


「推測ランキング」の根拠と背景

抹茶の国別消費量に関する公式な統計は限られているため、本記事の「推測ランキング」は、以下の公開情報や動向を総合的に判断して作成しました。

  • 日本の抹茶輸出データ: 農林水産省などが発表する国別の抹茶(または粉末緑茶)輸出量は、各国の需要を測る重要な指標となります。特に輸出量が継続的に増加している国は、消費が拡大していると見なせます。
  • 各国の市場調査レポート: 複数の市場調査会社が世界の抹茶市場規模や地域別動向に関するレポートを発表しており、特定の国・地域での成長率や主要消費傾向が分析されています。
  • 現地の市場トレンドとメディア情報: 各国のカフェチェーンでの抹茶メニューの普及状況、健康・食品関連メディアでの取り上げられ方、小売店での商品展開なども、消費者需要のバロメーターとなります。
  • 文化的な背景と受容度: 日本文化への関心の高さや、その国の食習慣(例:健康志向の度合い、お茶やコーヒーの消費文化)も、抹茶の受容度に影響を与えます。

これらの情報を踏まえ、特に消費量が多いと推測される国々をランク付けしました。


第1位:やはり「日本」

抹茶の故郷であり、茶道文化が根付く日本が、その消費量において世界トップクラスであることは揺るぎないでしょう。伝統的な茶道での利用はもちろん、日常的なドリンクやスイーツ、料理の素材としても幅広く親しまれています。年間を通じた安定した国内消費が、この位置を支える最大の根拠です。


第2位:成長著しい「米国」

日本に次いで、最も抹茶の消費が活発で、かつ成長が著しいのが米国です。

財務省貿易統計によると、米国は日本の緑茶輸出量全体の約39%を占め(2023年時点)、その多くが抹茶と推測されます

財務省貿易統計より引用した茶輸出先の国・地域別シェアのグラフ

引用元:財務省貿易統計

健康志向のブームを背景に、抹茶ラテやスムージー、エナジードリンクとしての需要が爆発的に伸びています。大手カフェチェーンでの導入も、その普及を後押ししており、輸出量と市場成長率の両面で明確な強さが見られます。


第3位グループ:健康意識の高い「欧州諸国」

米国に続き、抹茶の消費が大きく伸びているのがヨーロッパ諸国です。特に以下の国々で抹茶への関心が高まっています。

  • イギリス: ロンドンを中心にカフェ文化が発達しており、抹茶ラテなどのドリンクが浸透しています。健康志向の強い消費者層に支持されており、粉末緑茶の輸入量も増加傾向にあります。
  • ドイツ: 有機食品や健康食品への意識が高く、抹茶のようなスーパーフードに対する需要が旺盛です。オーガニック抹茶の市場も拡大しており、欧州内でも特に健康志向が顕著な市場として注目されます。
  • フランス: 食へのこだわりが強い国ですが、近年は新しい食のトレンドや健康志向から、抹茶を使ったスイーツやドリンクが人気を集めています。パリなどの都市部での抹茶カフェの増加も消費拡大の兆候です。
  • イタリア: コーヒー文化が根強いですが、健康志向の高まりとともに抹茶ラテなどの消費が増加傾向にあります。

これらの国々では、抹茶が単なる飲み物としてだけでなく、料理やお菓子作りの素材としても広く受け入れられ始めており、市場調査レポートでも欧州全体の抹茶市場の堅調な成長が指摘されています


その他の注目市場

上記以外にも、アジア太平洋地域(特にタイや台湾など)や中東(UAEなど)でも抹茶の需要は着実に伸びており、経済成長も加速している現状から、今後さらに市場が拡大していくことが期待されます。

日本以外でも生産が進む“グローバル抹茶”

抹茶といえば日本の伝統文化の象徴であり、その栽培・製造技術は長年にわたり国内で磨かれてきました。しかし、近年の世界的な需要拡大を背景に、抹茶の“生産”そのものも日本国外へと広がりつつあります。

中国:量産型抹茶の最大供給地

ここで改めて、冒頭で触れた『抹茶の定義』の課題が浮上します。

もともと抹茶のルーツをたどれば、唐の時代に中国で粉末茶として飲まれていた文化に端を発します。現代の中国でも、主に業務用・加工用として抹茶風の粉末緑茶が大量に生産されています。価格競争力の高さから、冷菓・ラテ・スイーツ用の抹茶原料としてグローバル市場で多く流通しており、世界の抹茶風製品の中には中国産が少なくありません。

ただし、日本で芸術品のレベルにまで昇華した伝統的な石臼挽き製法とは異なる大量生産工程が多く、色・香り・味わいにおいて大きな差があるとされます。

中国でのお茶の生産は年間約300万トン、そして中国からの輸出量は約30万トンという推計データもあります。

Tea & Coffee Trade Journal June 2024より引用した世界の茶の生産量グラフ

引用元:Tea&Coffee Trade Journal June 2024

またChina Dailyでは次の通り「中国が世界1位の抹茶生産・消費国」であることを報じており、抹茶の定義が国ごとに異なることが今後議論を呼びそうです。

Globally, China has become the largest producer and consumer of matcha, with production of 3,916 tons in 2020 and consumption of 3,966 tons, both more than 55 percent of the global totals, according to a matcha industry development white paper released by the China Center for Information Industry Development.

日本のお茶の生産量は7.5万トン、輸出量は7,549トンですから、桁が2つも大きい中国の動向から今後も目が離せませんね。

韓国・東南アジア:地域内消費と観光産業の融合

韓国では、済州島などを中心に抹茶の生産が進んでおり、地元ブランドによるカフェ展開や観光需要と連動した製品開発が目立ちます。カフェ文化の浸透により、抹茶ラテや抹茶スイーツの人気は年々高まっており、自国産抹茶の存在感も徐々に増しています。

また、ベトナムやタイなどでも、日本から導入された栽培技術を活用して、現地消費および輸出向けに抹茶風の粉末緑茶が生産され始めています。特にベトナムは緑茶の輸出大国であり、今後抹茶の量産基地として存在感を高める可能性があります。

欧州:ブランドとローカライズの試み

欧州においても、抹茶ブランドの地元化が進んでいます。例えば、ポーランドの「Moya Matcha」は、日本産の有機抹茶を輸入しつつ、欧州市場に合ったブランド構築に成功しています。また、一部では地元での小規模栽培や試験的製造も行われており、「Made in Japan」以外の抹茶も徐々に登場しています。

品質面では依然として日本産が“最高級”とされているものの、グローバル市場においては「用途に応じた価格帯と産地の選択」が現実の選択肢になりつつあります。

米国:世界一の抹茶バイヤー、スターバックスはどう動く?

抹茶消費大国の日本の、どの老舗茶舗よりも抹茶を買っている会社が、抹茶フラペチーノなどを世界中で展開しているスターバックス社です。

現在、スターバックス社は米国・中国で単価が高いことから客離れが生じており、コーヒーの2050年問題もあいまって抹茶の自社生産による原価構造の改善や業態転換の可能性もあるのではないかと考えられます。

彼らが大規模な抹茶農園を展開したとしたら日本にとって最大の脅威となるというのは考えすぎでしょうか?



まとめ:成長の影にある課題

抹茶の世界的な需要の高まりは喜ばしいことですが、その急成長の裏にはいくつかの課題も存在します。

まず挙げられるのは、供給不足や価格上昇のリスクです。抹茶は一般的な緑茶と異なり、栽培から加工に至るまで手間と時間がかかる特殊な製法で作られます。需要が急増する一方で、良質な抹茶の生産量を一気に増やすことは難しく、供給が追いつかなくなる可能性があります。これにより、原材料価格の高騰や、それに伴う最終製品の価格上昇が懸念されます。

次に、品質維持の課題も重要です。抹茶の人気に乗じて、低品質な緑茶を「抹茶」と称して販売したり、不適切な製造方法で作られたりするケースも散見されます。消費者が期待する抹茶本来の味や香り、健康効果が得られない場合、ブランドイメージの低下や市場全体の信頼性に関わる問題に発展しかねません。日本の関係者は、高品質な抹茶を安定的に供給し、その価値を正しく伝えるための取り組みが、今後ますます重要になるでしょう。

茶道家であり、株式会社茶禅の代表取締役を務める竹田理絵さんも、著書「『お茶』を学ぶ人だけが知っている『凛とした人』になる和の教養手帖」の中で、海外からのお客さんとお話をした際に、煎茶を砕いただけの回転寿しでも提供されるような「粉茶」と「マッチャ」とが混同されていることの多さについて指摘されています。

経済活動と同時に文化的な発信を継続することで、日本の高品質な抹茶の価値を、より高めることに繋がり、ひいては日本の茶産業に従事している方たちの持続的な労働環境の改善に寄与するのではと考えられます。

今後、より詳細なデータが公表されることに期待しつつ、抹茶のさらなる世界的な広がりと、その持続的な成長に向けた課題解決の動きにも注目していきましょう。

パンチです

最後までご覧いただき有難うございました

ピーチです!

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抹茶の未来を一緒に考えるきっかけとなれば幸いです。

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