【完全ガイド】2025年度 お茶の日本一が決定!──全国第79回全国茶品評会 農林水産大臣賞・産地賞の重みとは?

「農林水産大臣賞」の表彰状と金色のトロフィー、木箱に収められた高級茶葉が並ぶ全国茶品評会のイメージ画像
この記事でわかること
  • 「農林水産大臣賞」と「産地賞」の位置づけ
  • 主要茶種の製法と特徴、そして代表的な産地
  • 近年の全国茶品評会に見る産地のトレンド

2025年8月に奈良県において今年度No.1のお茶を決定する第79回全国茶品評会出品茶審査会が開催されます。

この品評会における「農林水産大臣賞」と「産地賞」は、数ある賞の中でも最高峰の栄誉とされ、その意味合いと重みは非常に大きいものです。

農林水産大臣賞と産地賞は、それぞれ「個人の技術の最高峰」と「日本一の茶どころの名に恥じない、地域全体の品質の高さ」という異なる側面から、日本茶の品質と生産技術における最高の栄誉を称えるものです。

つまりこの賞は、生産者の誇りや消費者の信頼、そして日本茶産業全体の発展を象徴する、非常に重みがあると言えます。

お茶に造詣が深い方も初心者の方もどうぞご覧ください。

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目次

お茶の日本一を決定する農林水産大臣賞とは?

それではこの賞の重みなどについて他の一般的な賞と比較して、その特別な位置づけを解説します。

1. 農林水産大臣賞

意味合いと重み: 農林水産大臣賞は、全国茶品評会において各部門(普通煎茶10kg、普通煎茶4kg、深蒸し煎茶、かぶせ茶、玉露、てん茶、蒸し製玉緑茶、釜炒り茶など)の最高位の賞です。

これは日本一美味しいお茶作りの技術と品質を示す称号でもあり、その栄誉は次の点で際立っています。

  • 国の最高機関からの認定: 「農林水産大臣」という国の行政機関の長が授与する賞であるため、国が認める最高品質の茶であることを意味します。これは、単なる業界内の評価を超え、公的なお墨付きを得たことになります。
  • 技術と品質の頂点: 全国から選りすぐられた茶が出品される中で、その年の各部門において最も優れた品質、風味、外観を持つと認められた茶に贈られます。これは、生産者の卓越した栽培技術、製茶技術、そして品質管理能力の集大成であり、その年の日本茶の最高水準を示します。
  • 生産者の名誉と信頼: 受賞者にとっては、長年の努力と情熱が報われる最高の栄誉となります。この賞を受賞することで、生産者の名前や茶園のブランド価値が飛躍的に向上し、消費者からの信頼も絶大になります。
  • 市場価値への影響: 農林水産大臣賞を受賞した茶は、希少性と品質の高さから、非常に高値で取引されることが多く、その市場価値は他の茶とは一線を画します。

他の賞との比較: 一般的な地方の品評会や、特定の団体が主催する賞も多数存在しますが、農林水産大臣賞はそれらとは格が異なります。

  • 地方賞: 特定の地域内での評価に留まることが多い。
  • 業界団体賞: 業界内の専門家による評価だが、国としての公的な裏付けはない。
  • 消費者評価賞: 消費者の嗜好を反映するが、専門的な品質基準に基づくものではない。

これに対し、農林水産大臣賞は全国規模での競争を勝ち抜き、国の最高機関が認めた、まさに日本一の茶であるという点で、他の追随を許さない重みを持っています。

2. 産地賞(優秀産地賞)

意味合いと重み: 産地賞(優秀産地賞)は、特定の茶種において、その産地全体としての品質の高さと安定性を評価する賞です。

農林水産大臣賞が個々の生産者の技術の頂点を表すのに対し、産地賞は地域全体の総合力を示し「日本一のお茶どころ」を称える賞なのです。

  • 地域全体の品質水準の高さ: その茶種において、出品された茶の総合的な審査成績が最も優れている産地(市町村など)に贈られます。これは、その地域で生産される茶の平均的な品質が非常に高いことを意味します。
  • 栽培・製茶技術の共有と向上: 特定の産地が継続して産地賞を受賞するということは、その地域内で栽培技術や製茶技術が共有され、地域全体で品質向上に取り組む体制が確立されていることを示唆します。共同研究や指導、情報交換などが活発に行われている証拠とも言えます。
  • ブランド力の強化: 産地賞の受賞は、その地域の茶のブランド力を大きく高めます。「〇〇産の茶は品質が高い」という評価が定着し、消費者からの信頼獲得や販売促進に繋がります。
  • 持続可能な生産体制: 安定して高品質な茶を生産できる体制が整っていることを示すため、持続可能な茶業の発展に貢献している評価でもあります。

他の賞との比較: 産地賞も、個別の生産者に対する賞とは異なる意味で非常に重みがあります。

  • 個人の賞: 特定の個人の卓越した技術を評価する。
  • 産地賞: 地域全体の生産者が協力し、一定水準以上の品質を維持・向上させていることを評価する。

産地賞は、その地域の茶業全体のレベルの高さを示すため、茶を購入する消費者にとっては、

「この産地のお茶ならどれを選んでも高品質」

と安心感をもって買い求めることが出来るため、ブランド力向上のため生産各地は力を注いでるのです。

2020年度~2024年度の受賞者一覧

栄えある日本一の称号を手にした個人の生産者(敬称略)と市町村の受賞者は以下の通りです。

8つのジャンルのお茶がどの産地で育てられているのか、どうぞご覧ください。

第74回(2020年度)全国茶品評会 受賞者リスト

ジャンル農林水産大臣賞(個人)受賞者所在地産地賞 第1位(団体)
受賞市町村
普通煎茶10kg知覧銘茶研究会 枦川製茶鹿児島県南九州市鹿児島県 南九州市
普通煎茶4kg相藤農園 相藤 直紀静岡県榛原郡川根本町静岡県 川根本町
深蒸し煎茶農事組合法人掛川中央茶業株式会社 研究部会静岡県掛川市静岡県 掛川市
かぶせ茶大江製茶工場 勝田 裕之京都府福知山市福岡県 八女市
玉露新枝折製茶 城 昌史福岡県八女市福岡県 八女市
てん茶小山 元治京都府宇治市京都府 宇治市
蒸し製玉緑茶安田 光秀長崎県東彼杵町
(ひがしそのぎちょう)
佐賀県 嬉野市
釜炒り茶嬉野南部釜炒茶業組合 山口 正美佐賀県嬉野市佐賀県 嬉野市

第75回(2021年度)全国茶品評会 受賞者リスト

ジャンル
農林水産大臣賞(個人)受賞者所在地産地賞 第1位(団体)
受賞市町村
普通煎茶10kg株式会社有村製茶 有村 幸二鹿児島県霧島市鹿児島県 南九州市
普通煎茶4kg狭山市茶業協会 奥富 雅浩埼玉県狭山市福岡県 八女市
深蒸し煎茶夢路 松下園 松下 みどり静岡県掛川市静岡県 掛川市
かぶせ茶JA京都やましろ宇治田原町茶業部会 下岡 清富京都府宇治田原町京都府 綾部市
玉露京田辺玉露生産組合 林 昭京都府京田辺市福岡県 八女市
てん茶阪田 広樹京都府久御山町
京都府 久御山町
(くみやまちょう)
蒸し製玉緑茶株式会社新緑園 代表取締役 黒木 信吾宮崎県新富町佐賀県 嬉野市
釜炒り茶嬉野南部釜炒茶業組合 山口 正美佐賀県嬉野市佐賀県 嬉野市

第76回(2022年度)全国茶品評会 受賞者リスト

ジャンル農林水産大臣賞(個人)受賞者所在地産地賞 第1位(団体)
受賞市町村
普通煎茶10kg知覧銘茶研究会 株式会社 枦川製茶鹿児島県南九州市鹿児島県 南九州市
普通煎茶4kg相藤園 相藤 令治静岡県川根本町福岡県 八女市
深蒸し煎茶農事組合法人山東茶業組合 工場長 山本 康博静岡県掛川市静岡県 掛川市
かぶせ茶土成茶園 大槻 由美子京都府福知山市京都府 綾部市
玉露京田辺玉露生産組合 山下 新貴京都府京田辺市福岡県 八女市
てん茶辻 喜代治京都府宇治市京都府 宇治市
蒸し製玉緑茶おのうえ茶園 尾上 和彦長崎県東彼杵町長崎県 東彼杵町
釜炒り茶嬉野南部釜炒茶業組合 秋月 健次佐賀県嬉野市佐賀県 嬉野市

第77回(2023年度)全国茶品評会 受賞者リスト

ジャンル農林水産大臣賞(個人)受賞者所在地
産地賞 第1位(団体)
受賞市町村
普通煎茶10kg有限会社みぞべ五光鹿児島県霧島市鹿児島県 南九州市
普通煎茶4kg静岡本山茶 小澤 晃 静岡県静岡市葵区静岡県 川根本町
深蒸し煎茶農事組合法人山東茶業組合 代表理事 伊藤 智章 静岡県掛川市静岡県 掛川市
かぶせ茶舞鶴茶生産組合岡田下支部 代表 菱田 繁政 京都府舞鶴市京都府 舞鶴市
玉露倉住 努 福岡県八女市福岡県 八女市
てん茶山﨑 省吾 京都府宇治市京都府 宇治市
蒸し製玉緑茶嬉野銘茶塾 三根 孝之 佐賀県嬉野市佐賀県 嬉野市
釜炒り茶嬉野南部釜炒茶業組合 山口 孝子 佐賀県嬉野市佐賀県 嬉野市

第78回(2024年度)全国茶品評会 受賞者リスト

ジャンル農林水産大臣賞(個人)受賞者所在地産地賞 第1位(団体)
受賞市町村
普通煎茶10kg知覧銘茶研究会 有限会社前原製茶 前原翔太鹿児島県南九州市鹿児島県 南九州市
普通煎茶4kg春野茶振興協議会 栗﨑克之静岡県浜松市静岡県 浜松市
深蒸し煎茶農事組合法人東山茶業組合 代表理事 杉山裕朗静岡県掛川市静岡県 掛川市
かぶせ茶JA京都やましろ宇治田原町茶業部会 下岡清富京都府綴喜郡宇治田原町
(つづきぐん うじたわらちょう)
京都府 綾部市
玉露倉住努福岡県八女市福岡県 八女市
てん茶(農)宇治川碾茶組合山﨑一平京都府宇治市京都府 宇治市
蒸し製玉緑茶碇石銘茶研究会 白川稔佐賀県嬉野市佐賀県 嬉野市
釜炒り茶嬉野南部釜炒茶業組合 吉牟田敏光佐賀県嬉野市佐賀県 嬉野市

ここ5年間の全国茶品評会に見るトレンド分析

第74回(2020年度)から第78回(2024年度)までの全国茶品評会の結果を見ると、日本茶業界におけるいくつかの興味深いトレンドが見えてきます。

日本一美味しいお茶の産地とは、お茶のジャンルによって異なるのです。

1. 安定した強さを見せる「茶どころ」

複数のジャンルで農林水産大臣賞産地賞を繰り返し受賞している産地があり、その地域が長年にわたる高い生産技術と品質を維持していることが分かります。

  • 静岡県掛川市(深蒸し煎茶): 深蒸し煎茶の分野では、毎年のように掛川市の生産者や団体が農林水産大臣賞を受賞し、産地賞も連続して獲得しています。これは、深蒸し煎茶における掛川市の圧倒的な地位と、一貫した高品質生産の努力が実を結んでいることを示しています。

  • 京都府(玉露・てん茶・かぶせ茶): 玉露、てん茶(抹茶の原料)、かぶせ茶といった覆い下栽培の茶では、京都府の生産者(特に宇治市、京田辺市、舞鶴市、宇治田原町など)が常に上位に名を連ねています。これは、これらの茶種における京都の伝統と技術力の高さが揺るぎないことを示しています。特に玉露とてん茶は宇治市が強い傾向にあります。

  • 福岡県八女市(玉露・普通煎茶4kg): 玉露において京都と並ぶ強豪であり、24年連続で産地賞を受賞しています。また、普通煎茶4kg部門でも産地賞を獲得するなど、その技術力の幅広さも伺えます。

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  • 佐賀県嬉野市(蒸し製玉緑茶・釜炒り茶): 九州の茶産地として、蒸し製玉緑茶(ぐり茶)や釜炒り茶といったユニークな茶種の分野で圧倒的な強さを見せています。両部門で毎年農林水産大臣賞の受賞者を輩出し、産地賞も独占する勢いです。これは、地域の特色を活かした茶作りの成功例と言えるでしょう。

  • 鹿児島県南九州市(普通煎茶10kg): 全国でも有数の生産量を誇る南九州市は、普通煎茶10kg部門で安定して農林水産大臣賞の受賞者を出し、産地賞も獲得し続けています。大規模ながらも高品質な茶を生産する技術が確立されていることが伺えます。

2. 特定産地の部門別専門性と品質向上

上記の伝統産地以外にも、特定の部門で高い評価を得ている産地が見られます。

  • 静岡県川根本町(普通煎茶4kg): 普通煎茶4kg部門で、静岡県川根本町の生産者が2020年と2022年に農林水産大臣賞を受賞し、産地としても産地賞を獲得しています。これは、静岡県内でも特に山間部の清らかな環境で育つ茶の品質が高く評価されていることを示唆しています。

  • 埼玉県狭山市(普通煎茶4kg): 2021年に静岡県勢が優勢な「普通煎茶4kg部門」で農林水産大臣賞を受賞しており、関東の茶産地としての存在感を示しました。

  • 長崎県東彼杵町(蒸し製玉緑茶): 蒸し製玉緑茶の部門で、2020年と2022年に長崎県東彼杵町の生産者が農林水産大臣賞を受賞しています。佐賀県嬉野市と並んで、この茶種の品質を牽引していることが分かります。

  • 宮崎県新富町(蒸し製玉緑茶): 2021年に蒸し製玉緑茶で農林水産大臣賞を受賞しており、九州地方における玉緑茶の生産技術の高さを示しています。

3. 個人と団体の継続的な技術研鑽

農林水産大臣賞を受賞する個人名を見ると、数年おきに同じ名字の生産者が登場するケースや、企業・団体の名前での受賞が見られます。

これは、個人の卓越した技術と経験が代々受け継がれていること、あるいは企業や組合単位で組織的な品質管理と技術向上が図られていることが理由だと考えられます。

4. 気候変動や持続可能性への意識の高まり(推測)

品評会の結果からは直接読み取れませんが、近年は異常気象や環境問題への関心が高まっており、茶の生産においても持続可能な農業環境に配慮した栽培方法への取り組みが進んでいると考えられます。

これらの取り組みが、将来的に出品茶の品質や生産体制にどのような影響を与えるかは、今後のトレンドとして注目されるでしょう。

まとめ

過去5年間の全国茶品評会のデータは、各茶種の伝統的な産地がその強みを堅持しつつ、特定の地域が独自の茶種で高い専門性を発揮している現状を示しています。

これは、日本茶業界が多様な茶種の品質向上と技術継承に成功している証と言えるでしょう。

Q1: 普通煎茶10㎏と普通煎茶4㎏の違いは何ですか?

全国茶品評会における「普通煎茶10kgの部」と「普通煎茶4kgの部」は、どちらも基本的な煎茶の製法で作られたお茶を評価する部門ですが、その出品ロットの重量に違いがあります。この重量の違いは、生産規模品質管理の特性を反映していると言えます。

普通煎茶とは

まず、「普通煎茶」とは、日本で最も一般的に飲まれているお茶の種類です。

茶葉を蒸して揉み、乾燥させて作られます。香り、味、水色(すいしょく)のバランスが取れているのが特徴です。

1. 普通煎茶10kgの部

  • 特徴: この部門は、10kg単位で出品される茶葉が審査の対象となります。
  • 意味合い: より大規模な生産ロット、あるいは安定した品質でまとまった量を生産できる技術が求められる部門と解釈できます。大量生産の中でいかに高い品質を維持できるか、という点が評価されます。これは、工場規模での品質管理能力や、広範囲の茶園から均質な茶葉を収穫・加工する技術の証とも言えます。
  • 主な受賞産地: 鹿児島県南九州市のように、生産量が非常に多い地域が強さを見せています。

2. 普通煎茶4kgの部

  • 特徴: こちらは4kg単位で出品される茶葉が審査の対象となります。
  • 意味合い: 10kgの部に比べてロットが小さいため、よりきめ細やかな品質管理や、特定の茶園・品種から少量生産ながらも際立った個性や高品質を追求する茶が評価されやすい傾向にあると考えられます。熟練した職人の技術が光る、希少価値の高いお茶が出品されることもあります。
  • 主な受賞産地: 静岡県の山間部(川根本町など)や、埼玉県狭山市、福岡県八女市など、特定地域の特色を活かした生産者が受賞しています。

まとめ

簡単に言うと、

  • 10kgの部: 「安定した大量生産における高品質」を競う部門
  • 4kgの部: 「小ロットにおける卓越した品質や個性」を競う部門

両部門は、日本茶の多様な生産背景と、それぞれ異なる側面での品質の追求を評価するために設けられていると言えるでしょう。

Q2. 普通煎茶と深蒸し煎茶の違いは何ですか?

日本で最も広く飲まれている煎茶(せんちゃ)は、大きく分けて普通煎茶(ふつうせんちゃ)深蒸し煎茶(ふかむしせんちゃ)の2種類があります。

これらの違いは、主に製造工程の「蒸し」の長さによって生まれ、それぞれ異なる風味や外観、そして育まれてきた産地の歴史を持っています。

普通煎茶(中蒸し煎茶)

特徴と製法: 普通煎茶は、茶葉を蒸す時間が比較的短く、一般的には30秒から60秒程度で蒸されます。

この「中蒸し」によって、茶葉の細胞組織が適度に保たれるため、以下のような特徴が生まれます。

  • 外観: 茶葉の形が比較的しっかりしており、針のように細く撚(よ)られています。水色は澄んだ黄緑色から黄金色で、透明感があります。
  • 香り: 若葉のような爽やかな「清(せい)の香り」が特徴で、すっきりとした上品な香りが楽しめます。
  • 味: 渋みと旨味のバランスが良く、煎茶らしい爽やかな苦味と後味の甘みが感じられます。

歴史と主な産地: 普通煎茶は、日本茶の主流として最も古くから広まった製法の一つです。江戸時代に現在の煎茶の製法が確立されて以降、各地に普及しました。

  • 静岡県: 特に山間部で生産されるお茶に多く見られ、静岡本山茶(しずおかほんやまちゃ)、川根茶(かわねちゃ)などが有名です。これらの地域は、古くから茶栽培が盛んで、明治時代には輸出茶として海外にも広く知られました。清らかな水と昼夜の寒暖差が大きい気候が、普通煎茶特有の爽やかな香りと味を育みます。
  • 京都府(宇治茶): 宇治茶の煎茶も普通煎茶の製法が基盤にあり、玉露やかぶせ茶と並び高い品質を誇ります。
  • 鹿児島県(知覧茶など): 全国有数の茶産地である鹿児島県でも、普通煎茶は主力製品の一つです。広大な茶畑で、安定した品質の普通煎茶が生産されています。

深蒸し煎茶

特徴と製法: 深蒸し煎茶は、茶葉を蒸す時間を普通煎茶よりも長く、60秒から120秒、時にはそれ以上にわたって深く蒸します。この「深蒸し」によって茶葉の細胞が破壊され、通常のお茶とは異なる独特の特徴が生まれます。

  • 外観: 茶葉の形が粉っぽく、細かくなっています。水色は濃い緑色で、濁りがあり、透明感はあまりありません。これは、茶葉の組織が壊れることで成分が溶け出しやすくなるためです。
  • 香り: 深い蒸しによって青臭みが抑えられ、甘く香ばしい「火香(ひか)」が特徴となります。普通煎茶のような爽やかさとは異なり、まろやかな香りが感じられます。
  • 味: 渋みが少なく、濃厚でまろやかな旨味と甘みが強く感じられます。飲みごたえがあり、苦味が苦手な方にも人気です。

歴史と主な産地: 深蒸し煎茶は、明治時代に現在の静岡県掛川市で、より美味しい煎茶を求める中で偶然生まれたと言われています。当時の掛川は、やぶきた品種の発祥地に近いことや、荒茶取引における不利な条件を克服するために、独特の製法を確立する必要がありました。深く蒸すことで茶葉が細かくなり、見た目の印象は変わるものの、味が濃く、淹れやすいという利点がありました。この製法が「深蒸し」として確立され、次第に全国に広まっていきました。

  • 静岡県掛川市: 深蒸し煎茶の代名詞とも言える産地であり、全国茶品評会でも深蒸し煎茶部門のトップを常に走り続けています。掛川市は、深蒸し煎茶発祥の地としての誇りを持ち、その技術は脈々と受け継がれています。
  • 鹿児島県(知覧茶など): 大規模な深蒸し煎茶の生産を行っており、濃厚な味わいが人気です。
  • 静岡県牧之原台地: 広大な茶畑を持つ牧之原台地でも深蒸し煎茶が広く生産されています。

まとめ

特徴普通煎茶(中蒸し煎茶)深蒸し煎茶
蒸し時間短い(30秒~60秒)長い(60秒~120秒以上)
外観茶葉の形がしっかり、針状。水色は澄んだ黄緑~黄金色。茶葉が粉っぽい。水色は濃い緑色で濁りがある。
香り若葉のような爽やかな「清の香り」。すっきり。甘く香ばしい「火香」。まろやか。
渋みと旨味のバランスが良い。爽やかな苦味と甘み。渋みが少なく、濃厚でまろやかな旨味と甘み。
主な産地静岡本山、川根、宇治、知覧など静岡県掛川市、牧之原、知覧など

このように、普通煎茶と深蒸し煎茶は、たった一つの工程の違いで、全く異なる魅力を持つお茶へと変化します。

それぞれの産地が培ってきた歴史と風土が、そのお茶の個性をさらに際立たせているのです。

Q3. かぶせ茶とはどんなお茶なのですか?

  1. 被覆(ひふく)栽培: かぶせ茶の最大の特徴は、新芽が伸び始める頃から収穫までの約1週間〜10日間、茶園に寒冷紗(かんれいしゃ)などの覆いを被せて日光を遮ることです。玉露の被覆期間(約20日以上)よりも短く、煎茶は被覆しないのが一般的です。
  2. うま味成分の増加: 日光を遮ることで、茶葉の中で渋み成分であるカテキンの生成が抑えられ、代わりにうま味成分であるテアニンが増加します。これにより、渋みが少なく、まろやかでコクのある味わいが生まれます。
  3. 水色と香り: 水色(お茶の色)は、煎茶よりも濃い緑色になる傾向があります。また、覆い下で育つことで独特の「覆い香(おおいか)」と呼ばれる海苔のような、あるいは青海苔のような、まろやかで上品な香りが生まれます。

かぶせ茶の魅力

  • うま味と渋みのバランス: 煎茶のさっぱりとした渋みと、玉露の濃厚なうま味の中間のような、バランスの取れた味わいが魅力です。日常使いのお茶として、幅広い層に親しまれています。
  • 深みのある緑色: 淹れたお茶の色が鮮やかな緑色になるため、見た目にも美しいです。
  • 独特の香り: 他の茶種にはない「覆い香」は、かぶせ茶を特徴づける重要な要素です。

全国茶品評会における「かぶせ茶部門」

品評会では、上記のようなかぶせ茶特有の風味、水色、茶葉の形状などが総合的に評価されます。

京都府の舞鶴市や宇治田原町、福岡県八女市などが主要な産地として知られ、高い技術力で高品質な「かぶせ茶」を生産しています。

Q4. 玉露とはどうして「お茶の王様」と称されるのですか?

玉露(ぎょくろ)は、日本茶の中でも特に手間暇をかけて栽培・製造される、甘みと旨味が凝縮された最高級のお茶で、その独特の風味が多くの愛好家を魅了しているからです。

特徴と製法:被覆(ひふく)栽培の秘密

玉露の最大の特徴は、摘み取りの前に一定期間、茶畑を覆って日光を遮る「被覆(ひふく)栽培」という特殊な方法で育てられることです。

  • 被覆栽培: 一番茶の新芽が伸び出す20日前後から、よしず棚に藁(わら)や寒冷紗(かんれいしゃ)などの資材を被せて、ほぼ完全に日光を遮ります。この遮光によって、茶葉に以下のような変化が起こります。
    • 旨味成分(アミノ酸:テアニンなど)の増加: 日光を遮ることで、茶葉が光合成を十分に行えず、苦味成分であるカテキンの生成が抑えられます。その代わりに、旨味成分であるアミノ酸(特にテアニン)が分解されずに茶葉に蓄積されます。
    • 独特の香り(覆い香): 海苔や昆布のような、独特で上品な香りが生まれます。これは「覆い香(おおいか)」と呼ばれ、玉露ならではの香りとして珍重されます。
    • 鮮やかな緑色: 日光不足を補うために葉緑素が増加し、茶葉が濃い緑色になります。淹れたお茶の水色も、鮮やかな翡翠色から濃い緑色になります。
  • 摘採(てきさい)と製造: 被覆栽培された茶葉は、主に新芽の部分が手摘みで丁寧に摘み取られます。その後の製造工程は、煎茶と同様に蒸して揉み、乾燥させる「蒸し製煎茶」の製造方法が採られます。

淹れ方: 玉露は、その濃厚な旨味と香りを最大限に引き出すために、比較的低温(50~60℃程度)のお湯で、時間をかけてじっくりと抽出するのが一般的です。少量のお湯で濃く淹れることで、とろりとした独特の甘露のような味わいが楽しめます。

歴史と主な産地

玉露の歴史: 玉露の誕生は、江戸時代末期の天保6年(1835年)とされています。

  • 誕生の経緯: 江戸日本橋の茶商「山本山」の6代目、山本嘉兵衛が、宇治の焙炉場(ほいろば)で高級な煎茶を開発しようと試みる中で、偶然にも被覆栽培の茶葉を煎茶製法で仕上げたところ、これまでにない気品ある風味と鮮やかな水色の茶が得られたと伝えられています。嘉兵衛はこのお茶を「玉の露」と名付け、後に「玉露」と呼ばれるようになりました。
  • 製法の確立: 当初の玉露は丸い形状でしたが、明治初期に宇治の茶師である辻利右衛門(つじりえもん)によって、現在の針金状に細く撚る製法が開発され、これが玉露製法の基礎となりました。

主な産地: 玉露は、その特殊な栽培方法から生産量が限られており、特に以下の産地が有名です。これらは「日本三大玉露の産地」とも称されます。

  • 京都府(宇治、京田辺など): 玉露発祥の地として、その伝統的な製法と品質を守り続けています。特に宇治市は、玉露や抹茶の原料となる碾茶の生産量が日本一であり、高級玉露の代名詞として世界的に知られています。
  • 福岡県八女市: 玉露の生産量で日本一を誇り、特に「八女伝統本玉露」は高い評価を得ています。八女地域は霧が発生しやすい土地柄であり、この自然条件が天然の被覆効果をもたらし、「天然の玉露」とも呼ばれるほどの品質を生み出しています。全国茶品評会でも常に上位を独占する強豪産地です。
  • 静岡県(朝比奈地区): 静岡県藤枝市岡部町朝比奈地区も、清流と山間部の気候が玉露栽培に適しており、三大産地の一つとして高品質な玉露を生産しています。

まとめ

玉露は、単なる飲み物ではなく、手間ひまをかけた栽培と製法が生み出す、特別な「旨味と香り」を味わうお茶です。

その背景には、先人たちの試行錯誤と、各産地が培ってきた独自の歴史と文化が深く息づいています。

Q5. 蒸し製玉緑茶とは、どんなお茶なのですか?

全国茶品評会にも部門がある蒸し製玉緑茶は、独特の勾玉(まがたま)のような形状から、通称「ぐり茶」とも呼ばれています。

一般的な煎茶とは異なる最終工程を経て作られるため、その風味や見た目にも特徴があります。

蒸し製玉緑茶の画像

引用元:田中茶舗 【令和7年産新茶】嬉野茶・玉緑茶(たまりょくちゃ) | 田中茶舗STORE

蒸し製玉緑茶(むしせいたまりょくちゃ)の製法と特徴

一般的な煎茶の製造工程では、最後に「精揉(せいじゅう)」という、細く真っすぐな形に整える工程があります。

しかし、蒸し製玉緑茶ではこの精揉工程を行いません

  1. 蒸し工程: 摘み取った生葉をすぐに蒸して酸化発酵を止めるところまでは煎茶と同じです。
  2. 揉み込み: 蒸した茶葉を揉み込むことで、水分を均一にし、成分を抽出しやすくします。この際、玉緑茶特有の丸みを帯びた形状が形成されます。
  3. 乾燥: 揉み込まれた茶葉を乾燥させます。この乾燥工程で、茶葉が勾玉のような、あるいは栗のイガのようなぐりっとした形状に仕上がります。

蒸し製玉緑茶の魅力

  • 独特の形状: ぐりっとしたユニークな形状は、見た目にも特徴があり、贈答品としても人気があります。
  • まろやかな味わい: 精揉工程がないことで、茶葉への負担が少なく、角が取れたまろやかで優しい口当たりが特徴です。渋みが少なく、すっきりとした甘みが感じられます。
  • 豊かな香り: 蒸し製であるため、清々しい香りが楽しめます。また、釜炒り茶のような香ばしさはありませんが、茶葉本来の甘い香りが引き立ちます。

全国茶品評会における蒸し製玉緑茶部門

品評会では、上記のような形状、まろやかな味わい、そして豊かな香りが総合的に評価されます。

主に佐賀県の嬉野市や長崎県の東彼杵町が主要な産地として知られており、これらの地域が蒸し製玉緑茶の品質を牽引しています。

Q6. 「釜炒り茶」と「ほうじ茶」との違いを教えてください

釜炒り茶は、日本茶の中では珍しく、蒸すのではなく「釜で炒る」ことで作られるお茶です。

この独特の製法が、釜炒り茶ならではの香ばしさとさっぱりとした味わいを生み出します。

釜炒り茶の製法と特徴

一般的な日本茶(煎茶や玉露など)は、摘んだ茶葉をまず蒸して発酵を止めますが、釜炒り茶は以下の工程で作られます。

  1. 釜炒り(殺青): 摘み取った生葉を、熱した鉄製の釜に入れ、手や機械で炒りながら水分を飛ばし、茶葉の酸化発酵を止めます。この工程が、釜炒り茶の最大の特徴であり、独特の香りを生み出します。
  2. 揉み込み・乾燥: 炒った茶葉を揉みながら形を整え、さらに乾燥させて仕上げます。この際、釜炒り茶特有の「勾玉(まがたま)状」または「ぐり茶」と呼ばれる丸みを帯びた形状になることが多いです。

釜炒り茶の魅力

  • 香ばしい釜香(かまこう): 釜で炒ることで生まれる、ほうじ茶にも似た独特の香ばしい香りが特徴です。この香りは「釜香」と呼ばれ、釜炒り茶の大きな魅力の一つです。
  • すっきりとした味わい: 蒸す工程がないため、渋みが少なく、さっぱりとしていながらも甘みを感じるまろやかな口当たりが楽しめます。透明感のある澄んだ水色も特徴です。
  • カフェインが控えめ(一般的な傾向): 釜炒り製法は茶葉に与える負担が比較的少ないため、一部にはカフェインが穏やかであると言われることもあります。

全国茶品評会における釜炒り茶部門

品評会では、上記のような独特の釜香、すっきりとした味わい、茶葉の形状などが総合的に評価されます。

主に佐賀県の嬉野市や宮崎県が主要な産地として知られてます。

ほうじ茶と釜炒り茶の違いについて

釜炒り茶とほうじ茶は、どちらも香ばしい香りが特徴のお茶ですが、次の通り製造工程原料に違いがあります。

特徴ほうじ茶釜炒り茶
製造工程煎茶などを焙煎して作る生葉を直接釜で炒って発酵を止める
原料加工済みの緑茶(煎茶、番茶、茎茶など)摘みたての生葉
香り高温焙煎による強い香ばしさ釜炒りによる独特の「釜香」
味わいさっぱり、苦渋みが少ないまろやか、すっきりした甘み、渋みは少ない
水色赤みがかった茶色透明感のある黄色がかった緑色

Q7. 2025年の第79回全国茶品評会の開催予定について教えてください

第79回全国茶品評会は、奈良県で開催される予定です。

詳細な日程と会場は以下の通りです。

  • 出品茶審査会:
    • 日時: 令和7年(2025年)8月26日(火)〜 8月29日(金)
    • 会場: JAならけん広域茶流通センター(奈良県奈良市)
  • 出品茶入札販売会:
    • 日時: 令和7年(2025年)9月18日(木)
    • 会場: 奈良県コンベンションセンター(奈良市)
  • 式典・褒賞授与式・全国茶業振興大会:
    • 日時: 令和7年(2025年)11月28日(金)
    • 会場: ホテル日航奈良(奈良市)

これらの情報は2025年5月20日現在の計画であり、今後変更される可能性もあるとのことです。

最新の情報は奈良県の公式ウェブサイトなどでご確認いただくことをお勧めします。

\詳細はこちらでご確認を!/

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