なぜコメ不足が解消しないのか?価格高騰を招く流通の実態

コメが足りない――なのに「在庫はある」と言われる。
スーパーでもふるさと納税でも、米は品薄で価格は高騰。
この矛盾の裏でいま、日本のコメ流通に何が起きているのか?

本記事では、価格を動かす「買い占め」や「出し惜しみ」の実態、
そしてそれを見えなくしている制度の限界と構造的な問題に切り込みます。
消費者も生産者も納得できる流通改革の第一歩を、一緒に考えてみませんか?


目次

はじめに

「スーパーでコメが高すぎて買えない」「ふるさと納税でもコメの予約が殺到」——。

いま、日本中で”コメ不足”の声が広がっています。農林水産省は「在庫はある」と発表し、2025年春には備蓄米15万トンを市場に放出しました。しかし、それでも米価は下がらず、消費者の不安も沈静化していません。

なぜ「在庫があるのに買えない」のでしょうか?
一見不思議なこの現象の裏には、流通段階での“買い占め”や“出し惜しみ”といった行動が、構造的に把握されていないという、日本の旧態依然とした仕組みがあるように思われます。


【問題の核心:流通段階で何が起きているのか?】

コメが高騰する中、実際には農家の倉庫や集荷業者、大手卸の保管倉庫には一定量の在庫が存在しています。しかし、それが市場に出てこない。

これは、価格のピークを狙って“売り控え”をする業者が存在するからです。政府が備蓄米を放出しても、「価格が崩れる」と見た業者が自前の在庫を出さない限り、市場に出回る供給量は増えません。

つまり、需給の問題ではなく、心理と仕組みによって“コメの流れ”が詰まっているのです。

私は「買い占め」という行為自体を一概に悪と断ずることはできません。企業や流通業者が市場動向を見越して在庫を確保するのは、マーケティングの一環として当然の経済行動とも言えます。私たち消費者もまた、「数量限定」「期間限定」といった“今買わなければ手に入らない”という不安を煽る広告に日常的に接しており、それに反応して購入行動をとっています。

問題なのは、それらの行為が“見えるかたちで説明されず”、結果として“市場を支配する手段”となってしまう点にあります。誰がどこにどれだけの在庫を保有しているのかが分からないまま、価格形成に影響を与える状況は、消費者の不信感と過度な不安を呼び起こします。

つまり、“買い占め”そのものではなく、その行動の“影響範囲”が大きくなり、かつ実態が不透明なまま進行することが問題なのです。それによって市場の健全性が損なわれ、消費者の信頼が失われる。この構造的な歪みこそが、本質的な課題と言えるでしょう。

私たちの代表である国会において、こうした在庫の偏在や出し渋りが国民の不安を招く問題であると正式に認識されるのであれば、その状態を是正するために、出荷の促進や在庫情報の開示を求める法律を準備することは、十分に正当な政策判断といえるでしょう。

その際には、許認可事業者であるコメ流通業者に対して、在庫情報の報告義務を課すことも、公的指導として合理的かつ必要な措置と認められるはずです。


【仕組みの限界:なぜ監査できないのか?】

前章で述べたように、コメ流通における在庫の偏在や出し渋りは、必ずしも違法ではなく、経済合理性のある判断ともいえます。しかし、それが社会不安を招き、制度的にもチェック機能が働かないとなれば、やはり問題は“仕組みの側”にあります。

日本のコメ流通業は登録制度があるものの、実際には届出と年1回の報告のみ。抜き打ち監査や在庫調査は行われず、ペーパーカンパニーや隠し倉庫を利用すれば、在庫を隠すことも容易です。

さらに問題なのは、こうした業界団体や卸業者の中には、農水省OBの天下り先となっている法人も存在することです。調査対象が身内であれば、本気の監査が働かないのは当然です。

制度は存在していても、それが十分に機能していない。これが現在のコメ流通制度の限界です。


【私ならこうする:「信用の見える化」改革案】

私が農政に関わる立場にあったとしたら、まず着手したいのは「在庫と販売予定の見える化」です。

  • 卸・集荷・倉庫業者に対し、リアルタイムで在庫を登録・更新する「デジタル在庫台帳」の導入
  • ランダムな実地監査と、虚偽報告への補助金停止・営業制限といった強制力のある罰則
  • 正直な業者には「政府公認の信頼マーク」を与え、備蓄米や政府調達の優遇枠を提供

ズルができず、まじめにやる人が報われる仕組みを整えることこそ、今の農政に必要です。


【結論:問うべきは“仕組み”である】

日本では、農家の高齢化と後継者不足が深刻化しており、今後のコメ生産量は確実に減少していくと見られています。人口減少による需要の変化と併せて、適切な生産・輸入量の見極めには、まず現在のコメ流通の透明性が不可欠です。主食であるコメの安定供給を守るためにも、「見える流通構造」の構築は待ったなしの課題です。

いま日本のコメ流通は、供給量そのものよりも、仕組みの不透明さによって混乱しています。

コメ不足の諸悪の根源は、流通段階での買い占め・出し惜しみが、監査されないために正確に把握できない旧態依然とした構造にある。

制度は存在していても、それが十分に機能していない。だからこそ「信用の見える化」が今こそ必要です。消費者が安心し、生産者も報われる流通の再構築に向けて、私たちはこの構造の問題に目を向けるべきではないでしょうか。

私は、長年米価が据え置かれてきたことを重く見ています。今の価格上昇は、ようやく農家が適正な対価を受け取るチャンスであると考えています。だからこそ、この機に利益を中間で留める流通構造から、労力に見合った利益分配を実現する見直しが必要だと考えてます。

追記 江藤農相が輸入米の主食用枠拡大案に反対!

2025年4月18日、農水大臣が「コメの輸入拡大はしない」と明言しました。

一見すれば「国産農業を守る」という言葉に聞こえますが、本当に守られているのは誰なのでしょうか?

皆さんの多くがすでにお気づきのように、「利権を抱えた既得権構造」そのものですよね。

国民の不安より、農水省OBの天下り先を守る身内の論理が優先されているのは明らかで、今回の発言は流通改革をしない宣言であり、一般国民だけでなく、まともに収益を得られていない農家も間違いなく被害者となるのです。

「在庫はあるが市場に出回らない」という歪んだ構造を放置したまま、“現場の痛み”には目を向けない政治に、いったい誰が共感できるのでしょうか?

私は国産のコメを守るというなら、“農家が報われる構造”を構築すべきだと思っており、今回の江藤農水大臣の発言に対して明確なNOを突き付ける必要があると思います。

これまで自民党に白紙の委任状を出し続けてきた農家の皆さんも、過去のご自身の投票行動を振り返り、7月の参議院議員選挙では、その一票に意味を持たせるべきです。

輸入米の主食用枠拡大案、江藤農相が反対 財制審が提案 – 日本経済新聞

2025年5月14日 追記 イオン米国産米100%商品を販売へ

 

イオンが米不足と価格高騰に対応し、アメリカ産カルローズ米を100%使用した「かろやか」を2025年6月6日から販売する。4kgで2680円(税抜き)と手頃で、サラダやリゾット向き。イオンの土谷美津子副社長は「日本の米文化を尊重しつつ、消費者に新たな選択肢を提供する方針」です。

日経新聞電子版より一部抜粋

販売予定量が1.4万トンとなると、2025年春に放出された政府備蓄米15万トンの10%弱にあたり、なかなかのインパクトではないかと思います。一縷の希望を抱きつつも、これによって「コメを抱え込んでいる流通業者」がどう動くのかが気になるところです。

今回、イオンが販売を決めたのは「サラダ・リゾット用に適した粘りが少ない品種」だとのこと。一般消費者にはあまり注目されないかもしれませんが、少なくともイオンの店頭でコメが買えない状況は解消されそうです。

今日も農協が経営するスーパーの前を通りましたが、開店時間前からコメを求める高齢者が列を作っている姿を目にしました。コメが最も必要なはずの育ち盛りの子供を抱える共働き世帯が、この行列に並ぶことすら難しい状況を考えると、コメ不足問題の早期解決が強く求められると感じます。

こうした現状からも、「子育てがしづらい国、日本」という問題が浮き彫りになりますね。

2025年5月21日 追記:江藤農水相、辞任——後任はまさかの“小泉進次郎氏”

江藤農水大臣が辞任し、後任には小泉進次郎氏が就任するとの報道が出ました。

👉 とにかくコメ 首相が小泉氏に指示 – Yahoo!ニュース

これまで「環境」や「レジ袋」で話題をさらってきた小泉氏が、次は「農業」に手を出すわけですが……果たして現場を知っているのでしょうか?

いわゆる「進次郎構文」による質問のはぐらかしには一日の長がありますが、「農業の未来」を言葉で飾り立てても、生産現場の疲弊や消費者の不安が消えるわけではありません。

特に、今まさに問われているのは、“放出された備蓄米があるのに、それが市場に出てこない”という構造的な歪みを、正面から改革できるかどうかです。

小泉氏の「パフォーマンス」が再び火を噴くのか、あるいは今回こそ現実に向き合えるのか——。

私は冷ややかに、7月の選挙までは黙って見ていることと致します。そして、彼の「総理への道」がこの任命によって完全に閉ざされることを、農政に関わる者のひとりとして強く願います。

農家が報われず、消費者も不利益を被り、ゆがみ切った既得権益の流通だけが肥え太る——。この構造を本当に変えられたなら、小泉進次郎総理大臣が爆誕するかもしれませんが……ほぼ無理でしょう。

7月の参議院選挙では、そろそろ皆さん、目を覚ましませんか?

「誰に任せても同じ」ではなく、「変える意思を持った人」に、一票を託すべきだと思いますよ。

【深掘り解説】コメ騒動と米商社の「異常な利益」—木徳神糧プレスリリースから見えた実態

先日、全国的な米の価格高騰と品薄が深刻化する中で、小泉農林水産大臣からの言及をきっかけに、一部の米穀卸売業者に対する「暴利を貪っている」との指摘が持ち上がりました。そのような状況下で、木徳神糧株式会社が発表したプレスリリースは、市場の混乱に対する同社の見解と、2025年第1四半期の決算状況を明らかにするものでした。

このプレスリリースを、深掘りして読み解いていきましょう。

プレスリリース概要:高まる売上と異常な利益率

木徳神糧のプレスリリースによると、2025年第1四半期(1月1日〜3月31日)の米穀事業セグメントは、売上高311億62百万円(前年同期比127.1%増)に対し、営業利益19億29百万円(同487.4%増)を計上しました。売上高の伸び以上に営業利益が大幅に増加している点が目を引きます。

同社は営業利益増加の主因として、以下の3点を挙げています。

  1. 高騰する仕入れ価格を販売価格へ適時適切に反映できたこと。
  2. スーパー等の小売店における値引き販売等の減少により、販売価格と利幅が改善したこと。
  3. 工場統合による製造効率の向上とコスト低減。

また、この増益は「長年にわたる『米余り』環境下での薄利多売という構造的な低収益体質において、供給不足という市況の急変が勃発した結果の反動であり、限定的な事象である」と認識していると説明しています。

疑問点:本当に「仕入れ価格の高騰転嫁」だけなのか?

まず、売上高が約1.27倍になったのに対し、営業利益が約4.87倍にもなるという「異常な」利益率の改善は、単純に仕入れ価格の上昇分を販売価格に上乗せしただけでは説明がつきません。

一般的に、主食用米の流通は、秋の収穫期(9月~10月頃)に農家から農協などを経由して米穀卸売業者に集荷され、そこで年間分の在庫が確保されます。つまり、木徳神糧のような企業が現在販売している米の多くは、前年(2024年秋)に仕入れが完了し、その時点での価格が確定しているはずです。

この点を踏まえると、プレスリリースにある「高騰する仕入価格を、ご理解をいただき販売価格へ適時適切に反映できた」という表現は、企業がスポット的に追加で高値仕入れを行っている可能性を否定はしませんが、全体の仕入れ単価が急激に高騰したわけではないと解釈できます。

浮かび上がる真の利益要因:在庫評価益と利幅の改善

私たちの見解では、木徳神糧の異常な営業利益率の改善の核心は、以下の点にあると考えられます。

  1. 既存在庫の「評価益」の実質化: 2024年秋に比較的安定した価格で仕入れた大量の在庫が、2025年1月以降の米価高騰によって市場価値が急騰。この値上がりした在庫を、現在の高騰した市場価格で販売できたことで、売上高が大幅に伸びると同時に、仕入れ値と販売値の差(粗利)が劇的に拡大した。
  2. 実質的な販売価格の上昇と利幅の改善: 「米余り」の時代には、小売店は集客のために米を大幅に値引きして販売し、その原資の一部は卸売業者も負担することがありました。しかし、今回の「米不足」では、小売店は値引きしなくても米が売れるため、値引き販売が減少。これにより、木徳神糧が小売店に卸す際の実質的な販売価格が上昇し、利幅が改善した。
  3. 工場統合によるコスト削減: これは純粋な事業努力によるもので、営業利益を押し上げる要因となった。

これらの要因、特に1と2が複合的に作用した結果、売上高の伸びをはるかに上回る営業利益の伸びを達成したと推測されます。同社が「供給不足という市況の急変が勃発した結果の反動」と述べているのは、まさに長年抑制されてきた利益が、市場の急変によって一気に顕在化したことを示唆していると言えるでしょう。

「暴利」と「適正利益」の狭間で

木徳神糧は「市場価格を釣り上げたり、買い占めや出し惜しみによって流通を阻害したりといった事実は一切ない」と主張しています。この点については、彼らが直接的に市場を操作した証拠がない限り、その主張は正しいのかもしれません。

しかし、結果として、国民が米不足と価格高騰に苦しむ中で、流通を担う企業が、保有する在庫の価値急騰によって巨額の利益を得たという構図は、社会的な感情として「暴利を貪っている」と受け取られかねない側面を孕んでいます。

企業としては、市場リスクを負って在庫を保有し、適切なタイミングで事業を運営した結果としての利益だと主張するでしょう。一方で、コメという基幹食糧の安定供給と価格という公共性の高い問題においては、「適正な利益」の範囲が常に問われることになります。

今後の展望

今回の第1四半期の高収益は、2025年4月以降の米価さらなる高騰と備蓄米放出という状況を鑑みると、一時的なものではなく、第2四半期以降も同様、あるいはさらに高い利益率を維持している可能性が十分に考えられます。

木徳神糧が2025年4月に発表した修正通期業績予想(営業利益率2.4%)は、今回の第1四半期の実績(6.1%)と比較すると非常に保守的です。今後の決算発表で、同社が通期業績予想を更に上方修正するかどうかが、注目される点となるでしょう。

コメを巡る問題は、単なる経済活動だけでなく、社会的な公平性や倫理観といった多角的な視点から議論されるべき課題であることを、改めて示しています。

🔍 なぜこの記事を書くのか?

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ピーチです!

最後までご覧頂き有難うございました。
コメ不足問題は根が深そうですね。
今解決しないと将来もっと困りそうです
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