生命保険会社本体では、例えば第一生命が新卒社員に月給33万5,560円を提示し、社員1人あたり約15万円相当の自社株を配布するなど、業界の大盤振る舞いが話題となっています。
それとは対照的に、厳しい現実に直面しているのが
「生命保険代理店」です。
現在、代理店ビジネスは都市部でも地方でも深刻な苦境に立たされ、存続の危機に瀕しています。
その背景には、都市部と地方で異なる構造的な問題が潜んでいます。本記事では、その詳細と現場の実態について徹底解説していきます。
都市部で消えゆく代理店、地方で苦しむ代理店
生命保険代理店を取り巻く環境は、大きな変化を迎えています。
都市部では、保険のネットビジネスが急速に拡大し、従来の対面営業スタイルの代理店は次々に姿を消しています。
スマホひとつで保険の比較から契約まで完了できる現代の若者は、代理店に足を運ぶ理由をほとんど見出しません。
また、高学歴の若者が持つ「お金」に関する豊富な知識が、生命保険そのものへの加入率低下を加速させています。
YouTubeでも投資系インフルエンサーが声高に説明してくれているように、日本の公的保険は保険料の高さに見合うほど手厚いものです。
私たち就職氷河期世代は、保険会社への不思議なまでの「信仰」のため、親世代・先輩世代からの圧力が強く、半強制的に生命保険に加入させられた歴史があります。
その時代とは異なり、「民間の保険に加入することは独身の場合、無駄なケースが多い」ことが若者世代を中心に徐々に浸透してきていることは、あるべき流れだろうと思います。
その結果、かつては当たり前だった、入社直後の新入社員への生命保険加入活動も、今ではその存在感を大きく失いつつあります。
一方、地方では衰退の事情が多少、異なります。
自動車ディーラーや地方銀行、農協、板金屋などが保険代理店業務を兼業しており、特に高齢者層は依然として対面販売を好む傾向があります。
しかし、少子化や若者の都市部への流出により、新規顧客の獲得は年々難しくなっているのが現状です。
地方の代理店が直面している課題は、地域社会全体の衰退を象徴しているとも言えます。
保険手数料削減の現実
令和7年4月、金融庁が発表した「保険会社向けの総合的な監督指針」に基づき、保険会社は手数料体系の見直しを行いました。
この背景には、消費者から「保険業界はもうけ過ぎではないか」と指摘を受けたことがあり、保険商品の値下げを求める指導が行われたのです。
大手生命保険会社は、この分のコストカットを人件費削減に頼ることなく、新入社員に対し、全業界トップクラスの初任給として33万円台を横並びで支給しています。
こうした華々しい待遇改善の裏側で、犠牲を強いられているのが生命保険代理店です。
代理店に支払われる報酬、つまり保険商品の売上に応じた手数料率は年々引き下げられ、代理店の収益は大きく圧迫されています。
特に小規模な代理店では「赤字経営」が深刻化しているのです。
日本損害保険協会の「ファクトブック2024」によると、令和5年には「生保代理店5,464店舗(前年比3.5%減)」が廃業したとされています。
新聞紙上では生保本体の社員の待遇改善のニュースで賑わっていますが、
一方で代理店の現場ではガソリンスタンドやコンビニのように、淘汰が進んでいる現実があるのです。
私は、知り合いの代理店経営者からこの現実を教えてもらい、先日、初めてこの状況を知りました。
帝国データバンクが伝えるところによりますと、2025年1月~8月の生命保険代理店の廃業は
前年の2.5倍に達したとのことで、更に厳しい経営状態が伺えます。

生命保険業界へ吹く逆風とは
生命保険や自動車保険に代理店を通じて加入することには、現在さまざまな逆風が吹いています。
政府は2022年に「資産所得倍増プラン」を掲げ、NISA(少額投資非課税制度)の累計買付額目標を5年間で56兆円に設定しましたが、2025年2月末時点でこの目標を3年前倒しで達成。
これにより、若年層を中心に「貯蓄から投資へ」の流れが強まり、保険商品よりも株式や投資信託が選ばれる傾向が明確になりました。
これは生命保険代理店ビジネスの衰退に直結しています。
また金融リテラシーの高まりにより銀行や農協、郵便局などの保険代理店窓口で紹介される保険商品には高額な手数料が含まれることが、若い世代を中心に一般常識として広まりつつあります。
これにより代理店での保険商品の購入を避ける消費者が徐々に増えた結果、需要が急速に低下しています。
特に子育てを終えた50代・60代の世代が、高額な死亡保険や医療・養老・介護保険に加入すること自体は、
公的保険と重複の分を差し引いても「無駄」であることがほとんどなのです。
こうした認識は、金融系YouTuberの「両学長」が書籍や動画を通じて広めており、多くの人に知られるようになりました。
さらに、池袋で発生した高齢者による交通事故をきっかけに広まった「免許返納」の動きも影響を与えています。
地方では自動車が生活必需品である一方、都市部では早めの運転卒業を決断する方が増え、
自動車保険の契約数が減少しています。
地方においては、ディーラーなどが代理店を兼ねているため、免許返納が直接的な打撃となっています。
また、若者の都市部への流出と少子高齢化が進む中で、代理店そのものの従業員確保も難しくなり、
廃業に追い込まれるケースも少なくありません。
このように、顧客だけでなく従業員確保の問題が重なり、代理店ビジネスは厳しい状況に直面しています。
保険代理店ビジネス現場の声:🔊「押し売り嫌いの保険屋さん ちょんご」の証言
保険代理店の未来について、Twitterで影響力を持つ「ちょんご」さん(@dep_shogo)は以下のように語っています。
✅ 保険代理店の未来予想 ・代理店数の半減 ・新卒採用の崩壊 ・個人向け保険はAI提案へ ・法人向け保険は勝機あり
「僕みたいに理由がない限りはあまりお勧めしない。やりようによっては週休4日制のような自由な生活ができると思います」 (引用:Twitter @dep_shogo)
このコメントは、保険代理店ビジネスの現場の厳しさを認められたうえで、これからも自分が確実に生き残れる自信と可能性を如実に表しています。個人向け保険ではAIによる自動提案が進む一方で、法人向け保険にはまだ勝機があると指摘しています。
「押し売り嫌いの保険屋さん ちょんご」さんは「私が知る限りでは、ネットから保険に入って満足した経営者は一人もいません」と語っており、事業の運営実態に即した賠償保険や労災上乗せ保険などの企業保険には人が介在する必要性を語られております。
また「サイバーリスク」などの新たなリスク対策については、今後も人間のサポートが重要であると強調されており、大変印象深く感じました。
出典:【未来予想】保険代理店の10年後はどうなっているか【2035年】 – プロに保険の無料相談・見直し|株式会社ミックコーポレーション【京都】
まとめ 保険会社と保険代理店の未来像
生命保険代理店ビジネスは、都市部ではネットビジネスの進展によってその存在感を失い、地方では高齢化と少子化の影響を強く受けています。
手数料削減や顧客減少、そして代理店の廃業が続くことが予測され、代理店業界には厳しい現実と未来が迫っています。
一方で、生命保険業界の大手企業は、これまでに蓄積した豊富な資産と安定した金融運用を武器に、都市部の主要拠点に多くの不動産や自社ビルを保有するなど、堅固な企業基盤を築いています。
しかしながら、「将来の安心」を約束する立場でありながら、自身の富を顧客や代理店と分かち合うことなく、自己防衛に専念する姿勢には疑問が残ります。
保険代理店ビジネスについては旧態依然のやり方では生き残れないのは明白ですが、企業にとっての新たなリスクへの備えには人が介在することで保険の真価を発揮できる領域があることも触れておきたいとおもいます。
先日、2026年に大学を卒業予定の就活生から、長いお悩みの相談がございました。
要約すると次の通りです。「生保内定をもらいました。でも評判が悪いので悩んでます。どうしたらよいですか?」。
結局高い報酬がもらえるけど、道義的にそれで良いのか悩んでいるのです。
私は一言お返ししました。
「全てを分かった上で生命保険会社に入社したいのであれば、どうぞご自由に」




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