すかいらーくホールディングス(以下 すかいらーくHD)が導入した店長年収1000万円超制度は、人手不足解消と利益率向上という二つの難題に挑む革新的な試みです。
同社は「店長年収1000万円超」の新制度を導入を発表しました。従来の上限840万円から大幅アップとなるこの施策は、各メディアで「飲食業界の人手不足を救う、夢のある制度」とされる中、Yahoo!ニュースでは「相当きつそう」というその実現に疑問を投げかける報道も一部ありました。
Yahoo!ニュースの記事にも取り上げられているように、この取り組みの短期的成果として店長のレベル底上げだけではなく、成功ノウハウも社内に蓄積されて機運も高まることでしょうが、確かに実現するにあたっては様々な問題が生じそうですね。。
中でも、同時期に発表された2027年中期事業計画では、2023年に4.0%だった営業利益率を、2027年には7.0%へ引き上げるという目標が掲げられており、この人事政策変更が通常であればグループ全体の足を引っ張る恐れもある点には注意が必要です。
すかいらーくHD 中期事業計画



引用元:すかいらーくHD公式ホームページ
つまり、中期事業計画を実現しつつ店長の報酬をアップするということは、人件費を上げながら利益率も引き上げるという、一見すると矛盾が生じることが必至なのです。
すかいらーくHD上層部が本気で、この二つを両立しようとしているのであれば、ここに“秘策”が隠れているはずだと、私は考えております。
ヒントにしたのは、コメダホールディングスの経営手法です。
同業のドトールHDの2024年度営業利益率が約5%なのに対して、コメダHDは約18%。その理由は明快で、コメダHDは店舗の約96%がフランチャイズで、人件費・固定費を外部化し、限られた本部体制で効率よく利益を上げているからです。
「優秀店長+業績好調店舗」をセットで富裕層に“オーナーの権利を譲渡”するフランチャイズ戦略
これは、「店長は報酬アップ」が報われ、「フランチャイズオーナーはリスクの少ないビジネス」に納得して投資が出来、すかいらーくHD本体は構造改革により中期経営計画を実現できる、といった三方良しの出口戦略といえるでしょう。
丁度、プロ野球球団「日本ハムファイターズ」が当時のスター選手であったダルビッシュ有選手をアメリカのMLB球団「テキサス・レンジャース」へポスティングシステムの制度で移籍をさせたことで、約51.7億円を手にしたことに似ています。
その資金を球団運営や若手選手の育成に充てたことで、その後、日本ハムファイターズは大谷翔平選手の活躍などで黄金時代を迎えたことは記憶に新しいですね。
すかいらーくHDの経営者が私だったら、中期的にこの取り組みを行います。




この将来のFC展開構想がなければ、
すかいらーくの営業利益率改善は
絵に描いた餅となり、新人事制度と
中期経営計画の両立は難しいですね。




この記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています
✅ 他にも企業分析の記事を公開中です
👉 Makoto LifeCare ブログを見る
-
【まとめ記事】丸亀製麺・牧のうどん・すかいらーく・未来食堂・吉野家──外食業界の成功の鍵とは?
「従業員の幸せなくしてKANDOは生まれない」という理想を掲げながら、その実現に苦戦する企業も少なくない現代の外食関連産業。 一方で、厳しい環境下でも独自の戦略で… -
すかいらーくに残された“最後の切り札”とは──資さんうどん?バーミヤン?それとも…
かつて「ファミレス王国・日本」を築いたのは、まぎれもなくすかいらーくグループでした。ドリンクバーの先駆けとして外食文化を変革し、全国すべての都道府県への出店… -
すかいらーく最後の切り札は「しゃぶ葉」-FC転換がもたらす経営再建の道すじ
全都道府県制覇、ドリンクバーの先駆け、1,000店舗達成──かつて“外食の王者”と呼ばれたすかいらーくグループは、今や時代の変化に取り残され、その主力ブランド「ガスト… -
丸亀製麺が築く働きがいと未来─直営主義が生む熱血社員たちのリアル
「従業員の幸せなくして、KANDO(感動)は生まれない。」 多くの外食チェーンが掲げるこの理念を、真に行動で示せる企業はどれほどあるでしょうか? トリドールホールデ… -
【ほぼ無理】吉野家ラーメン事業 中期経営計画 徹底分析
2025年5月19日、吉野家ホールディングスは2029年度までの中期計画にラーメン事業を据えて発表しました。 報道各社は一斉にそのニュースを「好意的」に伝えておりますが… -
吉野家ラーメン事業の失敗は確定!あのときこうしていれば・・・
吉野家グループホールディングス(以下、吉野家HD)は、世界一のラーメン事業を目指すと発表しましたが、その成功への道は既に誤っていると言わざるを得ません。 では、…
コメント