ご存知ですか、日本のお茶の最新データ?
「日本のお茶」と聞くと、何を思い浮かべますか? 多くの人が想像する以上に、今、お茶の生産現場では大きな変化が起きています。生産量の減少、茶農家の高齢化といった厳しい現実がある一方で、お茶どころの勢力図が塗り替えられているんです。
この記事では、最新のデータをもとに、そんな日本のお茶産業が直面する現状と、未来に向けた挑戦をQ&A形式で深掘りしていきます。
皆さんの知っている「お茶」の常識が、きっと変わるはずですよ!
日本のお茶の生産に関するQ&A
全国レベルでお茶の生産量はどうなっていますか?
2008年(平成20年)には全国で96,000トンのお茶が生産されていましたが、2023年(令和5年)には75,000トンへと20%以上減少しています。
この原因には生産者の高齢化や後継者不足などにより廃業が進んだことが挙げられます。

2008年(平成20年)に全国で45,000軒以上あったのですが、2023年(令和5年)には19,792軒と半数以下に激減しています。
主産地では静岡県の減少が目立ちますが、一方で鹿児島県は何とか横ばいを維持しています。
お茶の作付面積や農家の数はどうなってますか?
茶の栽培面積は約48,000ha(2008年)から約36,000ha (2023年)へと減り、栽培農家戸数は45,645軒から19,792軒へと半分以下に減少しています。



引用元:農林水産省 令和6年11月公表データより
てん茶(抹茶の原料)の県別の生産量を教えてください
令和5年は鹿児島県が1位、京都府が2位、静岡県が3位、以下愛知、三重と続きます。
抹茶の原料となる茶葉のことを「てん茶」と言います。通常の緑茶とは異なり、「被覆栽培」という特殊な方法で育てられます。収穫前に日光を遮ることで「うま味成分」であるテアニンが豊富に残る茶葉になります。



抹茶の産地と言えば「宇治=京都」のイメージが強いですが、近年、鹿児島県は売上が低迷している「せん茶」から「てん茶」へ生産をシフトさせて日本一の産地となってます。
一般的に「てん茶」の収穫には茶の苗を植えてから5年が必要と言われてますので、令和元年までに既に鹿児島県は積極的に生産シフトを進めていたことが伺えます。
また鹿児島県では「てん茶」の出荷にあたって必要な専用の加工施設がいくつも建設されており、更なる増産体制構築のため、2026年(令和8年)4月操業を目指して鹿児島市に有限会社坂之上製茶が用地面積1000㎡を超える工場を建設中です。
「てん茶」の葉も「鮮度が命」ですからね。

荒茶(あら茶)の県別の生産量を教えてください
令和6年は1位 鹿児島県、2位 静岡県となりました。
荒茶とは、お茶の葉が摘み取られた後に「蒸す・揉む・乾燥」という工程を経て、煎茶という完成品に仕上げられる前の「半製品状態」のお茶のことを指します。
令和6年、この年は荒茶の生産量ランキングに歴史的な1ページを刻みました。
お茶王国として君臨していた静岡県を、鹿児島県が逆転して悲願の日本一となったのです!
🏆 令和6年 荒茶生産量ランキング



引用元:農林水産省 速報値「2024年 作物統計調査(令和6年産)」
📉 背景と注目ポイント
- 鹿児島県の生産増には、主にペットボトル茶などに使われる「せん茶」の増産が寄与していると言われています
- 静岡県では収穫時期の雨や価格下落を受けて、生産量が案年より5%減少し、トップの座を明け渡す形となりました
なお令和5年のランキングは以下の通りでした。



「せん茶」や「てん茶」の生産量や取引価格の推移を教えてください
「せん茶」生産量3.8万トンで2008年比で60%、平均単価は1,223円(同77%)と低迷。
「てん茶」生産量4,176t(同288%)と過去最高、平均単価は3,141円(同89%)も上昇。



なお「てん茶」の平均価格が令和2年にかけて低下し、その後にV字回復している理由は次の通り考察されてます。
📉 ① コロナ禍と需要減による抑制(令和2年)
- 農林水産省の報告によると、令和2年産のてん茶はコロナ禍の影響で需要が激減し、生産自粛を余儀なくされた結果、価格が下落しました。
- 特に飲食店、観光需要、茶会などでの利用が激減し、供給過多と販売タイミングの遅れが重なった影響が大きかったとされています。
📈 ② 供給調整と回復期の需給バランス改善(令和3〜5年)
- 令和3年以降、アフターコロナによるインバウンド需要の回復や、国内外の抹茶人気の再燃を受け、これにより価格は一気に上昇傾向へ転じ、現在のV字回復に至っています。
主要産地での農家1戸あたりの栽培面積を教えてください
1戸当たりの栽培面積は、静岡県で1.4ha(平成17年比175%)、鹿児島県で3.6ha(同171%)、京都府で1.6ha(同145%)倍と経営規模は増加しています。



これは廃業する茶農家の農地を承継したり、新たに茶を栽培する畑を開墾することで積極的に経営規模を拡大する農家や法人が増えているためです。
平地が広いと言われる鹿児島県では特にこの伸びが顕著となっており、「てん茶」「荒茶」の生産量が日本一となった原動力となっています。
お茶の有機栽培を積極的にすすめているのは何県ですか?
海外でのニーズが高い有機JASほ場の約5割は鹿児島県にあります。
有機栽培茶は残留農薬規制対応の観点からも輸出に適していると高評価されていますが、病害虫防除、除草等に係る追加労力等の課題があります。この解決のため、産学官が連携し栽培技術の開発・実証に取り組んでいるところです。



日本のお茶の売上・輸出に関するQ&A
日本国内のお茶の消費量の推移について教えてください
1世帯当たりの緑茶・茶飲料の年間支出金額は、近年は11,000円程度で横ばいです。内訳は、緑茶(リーフ茶等)で減少(平成20年比64%)、茶飲料が増加(同146%)してます。
ペットボトル飲料の普及で1世帯当たりのトータルの消費量は横ばいですが、高単価のリーフ茶の消費は高齢者に偏っており、今後、ますますリーフ茶の消費量は減少するため、国内での売上額は減少することが見込まれます。



抹茶を含む緑茶の輸出売上推移を教えてください
米国やEU等における健康志向や日本食への関心の高まり等を背景に、輸出額は大きく増加しており、令和5年の輸出額は過去最高の292億円を記録しています。



変革期を迎える日本の茶葉農家の挑戦
日本茶は、伝統と文化を深く湛えながらも、今まさに大きな変革の時を迎えています。
全国的に生産量が減少し、茶農家の数も半数以下に激減するなど、現場では厳しい現実に直面してます。
しかし、その一方で明るい兆しもあります。特に抹茶の原料となる「てん茶」の生産量は過去最高を記録し、輸出も急増。この成長を牽引しているのが鹿児島県の台頭であり、長らくお茶どころとして知られた静岡や京都といった既存の勢力図を塗り替えつつあります。
高齢化や廃業といった課題に直面しながらも、茶業は単なる“縮小する伝統産業”ではなく、新たな価値創造と再構築を目指す産業へと進化しているのです。この記事で見てきた「数字」と「現場の動き」は、まさにその変革期を象徴しています。
次にスーパーやオンラインストアでお茶を選ぶ際には、どの産地の商品なのか、チェックしてみてください。
日本茶の未来は、私たちの手にかかっているのかもしれません。




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