- ▶ 日本から世界へ広がる抹茶ブームの背景と各地域の特徴的な受け入れ方
- ▶ 抹茶が一過性のブームを超えて、世界の人々のライフスタイルに根付いた経緯と現実
かつて日本国内で静かに親しまれてきた抹茶は、いま、世界中でさまざまな広がりを見せています。
アメリカではウェルネス志向の高まりとともに、
ヨーロッパでは本格的な茶文化へ深まる関心とともに、
そしてアジア各地では、抹茶を取り入れた新しいスイーツ文化の輝きのなかで──。
なぜ、いま抹茶がこれほどまでに世界で人気を集めているのか?
本記事では、地域ごとの背景や文化的な違いをたどりながら、世界的な抹茶ブームの今を紐解いていきます。
第1章 日本国内での抹茶ブームの変遷
日本国内での抹茶ブームは、実は一度に起きたわけではありません。
1990年代後半から2000年代にかけて、二つの大きな波を経て広がっていきました。
最初のきっかけを作ったのは、1996年にハーゲンダッツが発売した「グリーンティー(抹茶)アイスクリーム」です。
それまで抹茶風味といえば「年配者向けの渋い、そして苦いもの」というイメージが一般的でした。
そのなかで既に高級ブランドとして認知されていたハーゲンダッツ社が、より高級感のある商品として「抹茶アイス」を発売し、若い世代にも「抹茶はおしゃれな味」として受け入れられるきっかけとなりました。
この成功のためにハーゲンダッツ社は材料として石臼で丁寧にひいた高級な抹茶をふんだんに使用し、輸送や保管においても品質が劣化しないような配慮をした上で、繊細な日本人の味覚をも虜にする奥深い味わいをアイスクリームで再現したと言われています。
次に、2001年にスターバックスが「抹茶クリームフラペチーノ(現在の販売価格¥595~)」を発売しました。
カジュアルなスタイルで抹茶を楽しめるこの新商品は、若者層を中心に大ヒットし、全国規模で「抹茶=おしゃれで身近な存在」というイメージを決定づけました。
このスターバックスの成功をきっかけに、コンビニスイーツやファミリーレストラン、各種スイーツブランドでも抹茶を使った商品開発が一気に加速しました。
今では宇治の老舗茶舗でも本格抹茶スイーツが楽しめる都心型店舗や体験型テーマパークの建設などに取り組んでおり、国内外の多くの観光客を楽しませてくれています。
このように我が国において抹茶は、茶道を嗜む少数の人向けの伝統的な飲みものではなく、スイーツやドリンクとして日常的に楽しむものとして、幅広い世代に定着していったのです。
第2章 アメリカでの抹茶ブームの広がり
アメリカにおける抹茶ブームは、日本とは少し違った形で広がりました。
もともとは、日本のスターバックスで人気を博した「抹茶クリームフラペチーノ」の成功をきっかけに、アメリカ国内のスターバックス店舗でも抹茶系ドリンクが導入されるようになりました。
当初、一般層にとって抹茶は「甘くて飲みやすいスイーツドリンク」という位置づけで、抹茶ラテや抹茶を使ったスイーツが親しまれていきました。
しかし2000年代に入ってから、米国では抹茶が本格的に「健康志向の食材」として認識されるようになったのです。
ウェルネス志向が高まる中で、ヨガ愛好家やヘルスコンシャスな層を中心に、抹茶の持つ抗酸化作用やリラックス効果に注目が集まったのです。
彼らは、抹茶を伝統的に点てて飲むわけではありません。
バナナやベリー類、アーモンドミルクと一緒にミキサーでブレンドした抹茶スムージーを、グラノーラやフルーツにかけて食べるといったスタイルで、抹茶フレーバーを「スーパーフードのひとつ」として日常に取り入れています。
特に多くのセレブリティが、オーガニック抹茶を美容とリラックスのために愛用していることが話題となり、SNSで拡散したことから、抹茶の認知度と人気はさらに高まりました。
ジャスティン・ビーバーの妻であり、モデル兼、実業家でもあるヘイリー・ビーバーはInstagramのフォロワー数は5,000万人を超え、ウェルネスや美容に対する意識が高いことで有名です。その二人が抹茶ドリンクを飲んでいるところがキャッチされたと話題になったことも、抹茶ファンの裾野が広がった切っ掛けの一つだったそうです。
アメリカでは、「甘い抹茶スイーツ文化」と「健康志向の抹茶摂取文化」が並存し、それぞれのライフスタイルに合わせて、広い世代に抹茶が楽しまれているのが特徴です。
第3章 ヨーロッパに広がる抹茶ブームから日本文化の憧れへ
ヨーロッパでも、近年抹茶への関心は着実に高まっています。
ただし、アメリカとは異なり、ヨーロッパでは「高品質な日本文化の象徴」として抹茶を捉える傾向が強いのが特徴です。
背景には、もともとフランスやイギリスに根づく紅茶文化、
そして19世紀から続く「ジャポニズム(日本文化への憧れ)」の影響があります。
ヨーロッパでは、お茶をただの飲み物としてではなく、特別な文化的体験として楽しむ土壌が育まれてきました。
そのため、抹茶もまた、単なるスイーツ素材や流行のヘルシーフードとしてではなく、「日本が誇る伝統と品質を体験する手段」として受け入れられています。
ロンドンやパリでは、上質な抹茶を使ったラテやエスプレッソを提供するカフェが若者を中心に人気を集め、
抹茶マカロンや抹茶パフェといったスイーツでも、抹茶本来の香りや旨味を活かすレシピが重視されています。
甘すぎる加工品ではなく、抹茶そのものの質にこだわる姿勢が色濃く表れているのです。
また、日本の老舗茶舗が現地に専門店を出店したり、一流レストランが本格抹茶を使ったデザートをコースに組み込むなど、日本側からの「本物志向」の戦略的アプローチも、ヨーロッパにおける抹茶の高級イメージ形成を後押ししました。
こうしてヨーロッパでは、抹茶は単なる健康食材ではなく、「本物を味わう」特別な時間を彩る存在として広がりを見せているのです。




2025年5月17日追記 ロンドン・コーヒー・フェスティバル2025開催
毎年ロンドンで開催される「ロンドン・コーヒー・フェスティバル」は、世界中のバリスタやコーヒー愛好者が集まる一大イベントです。
2025年5月15日~18日に開催のイベント、「抹茶」が海外のバイヤーに大きな注目を集め、特にイギリスのバイヤーたちが抹茶を買い占めているというニュースが話題となりました。
👉英国で抹茶が大ブーム 入手困難で「売り上げ紅茶超え」も(テレビ朝日系(ANN)) – Yahoo!ニュース
👉ロンドン・コーヒー・フェスティバルの公式ホームページはこちら



画像は独自作成
抹茶にとってAWAYなコーヒーイベントで、現地ブランド5社が抹茶を取り扱い、バイヤーとの商談を行っています
- GoMatcha(スタンド: HP26A):宇治産の高品質抹茶を提供
- Matcha and Beyond(スタンド: E15):鹿児島・宇治の有機抹茶を使用
- MOYA Matcha(スタンド: H09):環境に優しい高品質抹茶
- MATSU-CHA(スタンド: SH24):日本の茶農家から直接仕入れた茶葉
- blendsmiths(スタンド: B06):日本伝統抹茶ベースのブレンド
社名を見てお分かりの通り、抹茶を専門または主力品として扱っている会社が現地には多数存在するようですね。
真贋を見極める日本の有名な茶舗の名前は見当たらないのが心配ですが、間違いなく英国・欧州での抹茶熱は高まっているのが分かります。



引用元:MATCHA BEYOND社公式ホームページ
出展企業のホームページを調べたところ、高級抹茶の定期配送サービスをやっていて鹿児島産のオーガニック高級抹茶30gが「約6000円(送料込み)」で販売されているようです。
同じ品質のモノか分かりませんが同じく鹿児島県産のオーガニック抹茶30gを楽天市場で探すと「2000円弱(送料込み)」ですから、現地ブランド業者にとって「抹茶は間違いなく美味しい商品」なのでしょうね。
第4章 アジア地域における抹茶ブーム
アジアでも、日本発の抹茶ブームは力強く広がりを見せています。
特に韓国と台湾では、抹茶が単なる流行を超え、独自のスイーツ文化の中に根付いているのが特徴です。
韓国での抹茶人気
2010年代に入ると「抹茶ラテ」や「抹茶スイーツ」が若者の間で大流行しました。
抹茶を使ったケーキやアイスクリームはカフェメニューの定番となり、「抹茶×チーズケーキ」「抹茶×ミルクティー」など新しい組み合わせも次々登場してます。
SNS映えする鮮やかな抹茶メニューが若者に拡散され、「Korean Matcha」として人気を一気に加速させたのです。
台湾での抹茶ブーム
台湾でも、抹茶ブームは急速に拡大しました。
もともと戦前の日本の統治時代に辻利が現地の百貨店に抹茶を持ち込んだ歴史があるようです。
日本旅行ブームと連動し、現地の人々が日本で体験した本格的な抹茶ラテや抹茶スイーツの味を持ち帰り、台湾国内でも抹茶専門店や高級スイーツ店が次々と誕生してます。
こちらの画像は辻利が出店している台湾のメニューの一部ですが、原材料も全て日本から輸送し、祇園辻利の代名詞とも言えるパフェ的な商品が日本円で750~800円(1台湾ドル=約5円)で提供されています。
\詳しくは、こちらをどうぞ/



アジア圏における抹茶ブームは、日本ブランドの信頼感や現地文化との融合によって、単なる一時的流行を超えた、新しい定番文化へと確実に成長しているのです。
おわりに
かつて日本国内で静かに楽しまれていた抹茶は、今や世界中で様々な形に進化し、広がりを見せています。
アメリカではウェルネスの象徴として、
ヨーロッパでは日本文化への敬意とともに、
アジアではライフスタイルに溶け込む新たなスイーツ文化として──
それぞれの地域で、抹茶は独自の魅力を持ちながら受け入れられています。
日本国内に目を向けても、茶道人口の減少が指摘される一方で、コンビニスイーツやカフェドリンクなど、よりカジュアルなかたちで抹茶に親しむ機会は確実に広がっており、また本格的なものを都心でも体験できる施設も充実してきています。
抹茶は伝統を守りながらも、時代と地域に合わせて生き続けているのです。
その広がりの背後には、日本の生産者やブランドが長年培ってきた品質への誇りと、文化を大切にする心が脈々と息づいています。
これからの抹茶ブームは、単なる一過性の流行ではなく、世界中の人々の暮らしに寄り添う存在へと、さらに成熟していくことでしょう。
日本が誇るこの伝統と革新の力が、未来の世代にも受け継がれていくことでしょう。
この記事を読むと、抹茶ブームの主役が海外の企業のように感じられる方もいるかもしれません。しかし、その背景には、日本の茶産業に携わる人々の並々ならぬ努力があったことを忘れてはなりません。
たとえば、海外市場で抹茶が受け入れられるためには、他の農産物と同様、非常に厳しい残留農薬基準をクリアする必要がありました。その基準を満たすために、日本の生産者たちは長い年月をかけて栽培技術を研ぎ澄ましてきたのです。
こういった地道な努力の積み重ねが、今日の抹茶の国際的な認知度と信頼を築いています。
関連する詳しい内容については、こちらの記事にもまとめておりますので、ぜひあわせてご覧ください。




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