2025年10月、「世界お茶まつり2025」が静岡市で開催されます。
この一大イベントの裏にあるのは、「静岡茶の復活」という並々ならぬ経済的使命です。
静岡県といえば、かつては日本茶の王者。ところが今、その地位は揺らいでいます。
鹿児島県が2024年、ついに荒茶生産量で静岡県を上回り、日本一となったのです

長年トップに君臨してきた静岡が、統計上でも“過去の王者”になった瞬間でした。
そんな中、静岡県が全力で仕掛けるのが、この「世界お茶まつり2025」。
これは単なる観光イベントではありません。
静岡茶を“再び経済の主役に戻す”ための、四季をまたいだ戦略的プロジェクトなのです。
第1章:失地回復へ──静岡茶が抱える危機感
静岡県は今、かつてないほど“お茶を売る”ことに真剣です。
その理由ははっきりしています。
- 2024年、鹿児島に荒茶生産量で日本一の座を明け渡した現実
- 卸価格は下がる一方、単価競争では鹿児島に勝てない
- 若年層の飲用率低下は止まらず、贈答品としての需要も減少傾向
静岡県茶業会議所の伊藤智尚専務理事は「静岡は山間地や台地に茶畑が集まり、機械化が進みにくい」と要因を説明する。「良品生産が第一だが、『日本一』というブランドを譲った影響は大きい」として、「茶どころ復活のために生産者や団体、行政などの関係者が一致団結する必要がある」と読売新聞オンラインの取材で語っていましたが、まさにその一致団結の機会が「世界お茶まつり2025」なのです。
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第2章:春──新茶とともに芽吹く希望
2025年春の新茶シーズン(4〜5月)は、いわば“静岡茶の資源力”を見せる季節となりました。
県内ではこの時期に合わせ、次のようなイベントが集中開催されてます。
- 茶畑ウォーキング・サイクリングなどの観光体験
- 「茶の都ミュージアム」での新茶フェアとマルシェ
- JRや民間連携によるデジタルスタンプラリー
- 阪急たびコト塾との連携による講座&モニターツアー
これらは単なる観光誘致ではなく、茶に関わる消費者・教育者・事業者との接点作りを狙った「販路再構築戦略」の一環です。
しかも今年は、世界お茶まつりとの連動を意識し、「春=茶の出発点」として定義づける動きが見られました。
つまりこれは、“秋の本祭で一気に売上を伸ばすための前フリ”なのです。
第3章:初夏──“味覚の演出”で静岡茶を主役に
2025年6月、静岡茶の消費拡大を担うキーワードが「ペアリング」でした。
開催されたのは、「SweeTEAペアリング2025スイーツコンテスト」。
この審査員長を務めたのは、日本を代表するパティシエ・鎧塚俊彦シェフ。



このコンテストは単なるレシピ自慢ではなく、
「静岡茶をどう演出すれば“買いたくなる”か」という消費者目線で設計されており、静岡茶の本気度が伺えます。
鎧塚氏のような“外部の感性”を巻き込むことで、
静岡茶は「再び売り場で選んでもらえる」存在になるんだ──
そんな意気込みが、確かに見えたイベントですね。
第4章:夏──仕込みの季節、静かなる攻防
現在(6月〜9月)は表立ったイベントこそ少ないものの、
“本祭成功への準備”が着々と進められている大切な下準備の時期なのです。
- スイーツ入賞作の量産体制と流通確保
- 世界お茶マーケットへの出展調整
- 海外バイヤー・インバウンド層向けPR戦略
- 茶業者の連携強化、宿泊・交通インフラの整備
この期間は「祭りの裏方」であるのと同時に、
秋の本祭の成功を決める“仕込みの本丸”なのです。
終章:秋──世界が見つめる4日間へ
そして迎える、2025年10月23〜26日。
静岡市グランシップでは「世界お茶まつり2025」の本祭が開催され、
国内外の茶業者・食品メーカー・観光関係者が一堂に会します。
- ワールドO‑CHAマーケット:買える、試せる、出会える商談と文化交流の場
- Cha-1グランプリ:世界中の茶文化が集う「お茶の頂上決戦」
- 入賞スイーツの販売・表彰:味覚×物語の成果がここに集約
つまり、静岡茶はこの4日間で、
「単なる産地」ではなく
「世界に通用する茶文化のプラットフォーム」として再定義されるのです。
ここでの成果は、単年の観光収入ではなく、
中長期的なブランド価値と輸出力に直結する──
それが、この祭りにかける静岡の本気です。
開催時期が近づいてきたら、改めて詳細のご案内させて頂きますね。
🏁 おわりに──反撃はもう、始まっている
静岡茶は「かつての王者」ではなくなりました。
しかし、その名に恥じない文化と技術、そして再起の覚悟を持っています。
世界お茶まつり2025は、静岡茶にとって“ラストチャンス”かもしれません。
けれど逆に言えば、これを跳ね返せれば、
静岡茶は再び「売れる農業・観光・文化産業」の柱になれるのです。
経済の土台としてのお茶──
その意地と底力を、私たちはもう一度信じてみてもいいのではないでしょうか。
ただ、このブログで度々お伝えしているように、お茶の各生産地が切磋琢磨することは将来に向けて大切なことだとは思いますが、産地間の協力関係の構築についても考えるタイミングに来ていると思います。
皆さんは、どのようにお考えですか?




お茶の将来を考えると…
県個別の対応には限界があると思います。
皆さんの意見をお聞かせくださいね。




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