2025年、米ウォルマートによる1,500人規模のホワイトカラー人員削減が発表されました。対象となるのは技術・EC・広告を担う本社スタッフ。この動きはもはや遠い世界の話ではありません。
日本でもその兆しは見えてきています。かつてフランチャイズ店が“ブラック”の象徴であり、本社スタッフが“人生勝ち組”とされていたセブン-イレブン。しかしその本社がカナダ企業に買収され、「次に整理されるのは誰か」という現実が忍び寄っています。
一方で、AIやDXの進展にも関わらず、確実に存続する職種があります。それが農業をはじめとするブルーカラー労働です。
現在、地球温暖化の影響で農業の主戦場は本州から北海道へとシフトしています。本州で育てられていたトマトやぶどう、さくらんぼといった作物が、「北海道なら未来も育てられる」と避暑移行を始めています。
もし「会社に居座れるかわからない」「早期退職の可能性がある」という不安を抱えているなら、北海道での農業法人への就職を、一度考えてみる価値があるかもしれません。
これまで「窓際貴族」というブログ記事で、会社に残る勝者の戦略を提案しました。しかし今回紹介するのは、“次善の戦略”。北海道で再び自分の人生を構築する。それは退職ではなく、新しいスタートなのです。
第1章:「活かす」より「生きる」 50代の再就職は割り切りが前提です
農業法人に就職する、と聞くと—— 「都会で積んできたビジネススキルを地方で活かして、地域に貢献しながら生きていける」 そんな理想を思い描く人もいるかもしれません。
でも、現実はそんなに都合よくはできていません。
■ 農業法人=中小企業。社長が“絶対・神”です 北海道に限らず、全国の農業法人の大半は、オーナー経営による中小企業です。 トップが社長、判断も指示もすべて“上から”。社員が自由に意見を言える文化は、必ずしも整っていません。
募集要項にはよく「経営感覚のある人材歓迎」「将来的にマネジメントもお任せ」などと書かれていますが、実態としてはその多くが“建前”に過ぎません。
実際、改善提案や生産性向上のアイデアを積極的に出した結果、「うち、そういうの要らないから」と煙たがられた人も少なくありません。
■ 「ビジネス感覚」より「現場感覚」が重視される 農業法人で最も重宝されるのは、
- 黙って働く
- 言われたことを正確にこなす
- 収穫・出荷・整備などの現場作業に従事できる
こうした“作業力”と“素直さ”です。
たとえあなたが前職でマネジメント経験があり、数値管理に強くても、現場で求められるのは「午前中に何コンテナ詰めたか」です。
農業法人では、“働く場”を提供されるだけで十分ありがたいと考えるくらいの謙虚さが必要です。
■ 「農業を体験したい」ならまず短期バイトから もし「農業に興味がある」「まず体験してみたい」と思うのであれば、山形県が毎年実施するさくらんぼ収穫の短期アルバイトは良い選択肢です。6月上旬から下旬までの期間限定で、週末だけの勤務も可能。農業の現場を体験でき、農業法人への道を考えるきっかけになります。
■ 発揮したい能力があるなら、それは“自分でやる”世界です もちろん、「経営管理能力を活かしたい」とか「業務改善を進めたい」と本気で思うのであれば、それが実現できる場もあります。でも、それは自分でリスクを取って農業法人を立ち上げる、つまり「起業」という選択になります。
土地、機械、資材、販路、人材。すべてを自分で整え、経営責任を持つ——それができるなら、「能力を活かす農業」は可能です。でも、それができないのであれば、農業法人で“雇われる”というのは、能力発揮の場ではないと割り切るべきです。
■ まとめ:農業法人に“雇われる”とは、こういうこと 皆さんの“過去の実績”や“最終学歴や肩書”は、現場ではほとんど意味を持ちません。
求められるのは、体を使って働くこと。地域社会に入る覚悟、空気を読む力も求められます。
「生きるために働く」=“割り切り”ができる人だけが続けられる。 もしあなたが「誇り高き元管理職」で、「今度は自分の知見を活かしたい」と考えているなら——まず一度、自分に問いかけてみてください。
“自分の力を活かしたい”のか、それとも“生きていきたい”のか? 農業法人に就職するというのは、後者を選ぶ覚悟を持った人にこそ、ふさわしい道です。
第2章:「便利で文化的な生活」と引き換えに得る“50代の自由”
「北海道で農業なんて、寒いし不便で、現実的じゃないでしょ。」 そう感じた人も多いはずです。実際、都会から地方に移住して農業を始めることには、いくつかの強烈な“心理的ブレーキ”があります。
■ 1. 「北海道の冬=過酷」のイメージが強すぎる 冬になると気温は氷点下20度、雪は膝まで積もる。 そんな映像をテレビで見れば、「ここで暮らすなんて無理だ」と思うのも無理はありません。
でも実際には、農業法人に勤める人たちの多くは、冬季に仕事を調整して休養を取るか、副業に従事するライフスタイルを送っています。 北海道の農業には、“冬に働かなくてもいい構造”があり、この事実は意外と知られていません。
つまり、「過酷な雪の中でも、毎日畑で働かなければならない」という不安は、多くの場合、誤解か過剰な想像にすぎません。
■ 2. 首都圏=便利で文化的という“呪い” 都会人が踏み出せない理由のひとつは、「今の生活が“当たり前”だと思っていること」です。
- コンビニが1分圏内にある
- 駅まで10分、電車でどこへでも行ける
- 医療・娯楽・買い物に困らない
確かにこれらは便利ですが、それは同時に“都市の機能に依存している”ということでもあります。 しかし、年金の見通しも立たない今、果たして“都市生活を維持する価値”はありますか? 生活費を抑えつつ満足感を落とさない暮らしへシフトする際、大都市圏から離れる決断は極めて現実的です。
■ 3. 「便利さ」より「生きられる場所」を選ぶ時代に 気温上昇による都市のヒートアイランド化、本州での農作業では熱中症が常態化し、高温障害で作物が枯れる。 その結果、東京近郊の千葉や埼玉でも、労災すれすれの環境で働く現場が増えています。
もはや「便利で快適な暮らし」だけでは生きていけない時代になりつつあります。
■ 4. 農産地そのものが、“脱・本州”を始めている 重要な現実として、農産物の生産拠点が続々と北海道へ移りつつあります。
例えば、山形県のさくらんぼ(佐藤錦)は、春先の異常高温が受粉率に影響を与え、実がならない年が続出しています。その結果、一部の農家が収入減に直面し、北海道への生産地移転を選択しています。 これと同時に北海道では、“加温型露地栽培ハウス”が普及。1月から暖房を入れて人工的な春を誘導し、高度な技術で確実な収穫へ繋げています。
■ 新たな情報:北海道への移住や口コミ情報も活用する 北海道での就農に興味がある方は、農水省が提供する 新規就農者紹介ページ をぜひチェックしてみてください。特に起業や農業法人の承継を検討している方向けの情報が充実しています。
また、農業法人への就職に関するリアルな感想が知りたい方には、転職サイトの「口コミ」 を見ることをおすすめします。 例えば、働き方は☆3.8の評価でも、年収・給与が☆1.0の評価であるなど、実際に働いた人の声は極めて参考になります。
■ 5. それでも北海道に行くべきか? 北海道には確かに不便さもあります。 ただし、継続的に働ける場所があり、自然と向き合いながらストレスの少ない環境で働ける。 これこそが「便利さ」と引き換えに得る、本当の自由なのです。
■ まとめ:「便利さ」と「生きる力」は、両立しない 都市の便利さを手放しても、生きられる場所と自由な時間を手に入れる選択肢があります。 「どこで生きるか」を再考する時期に差し掛かった今、この章はその重要性を的確に示していると言えるでしょう。
第3章:50代でも“残れる人”と“もう居られない人”の分かれ道
2025年、ウォルマートの間接部門リストラやセブン-イレブン本社の外資買収といった事例が示すように、ホワイトカラーの世界にも静かにリストラの波が迫っています。 会社という船にしがみついていれば安全だった時代は、もう終わりかけています。
■ 「窓際貴族」という勝ちパターン 「窓際貴族」という生き方は、居場所のある人だけに許された特権的な戦略です。 十分な金融資産を確保し、会社内で信頼関係を築いた人が出世競争から降り、責任が少なく給与も安定したポジションを確保することで、穏やかな退職までの道を選ぶというもの。
企業に居場所を残せた人間にとっては、人生の最上位戦略ともいえるでしょう。 ただし、それができるのは、“残るべき力がある人”に限られます。
■ でも、「残れない人」はどうする? 問題は、この“窓際”すら確保できなかった人です。
- 評価が低くなりすぎた
- 役職定年とともに“次の席”がなかった
- 子会社や関連会社への出向を打診された
- 会社に居ても、もう居場所がないと感じている
これらの状況に直面し、選択肢を見失う人も少なくありません。
■ 次善の策としての「農ある暮らし」 “会社に残る”という選択肢を失ったとき、“どこで”“どう働いて”生きていくか——それをゼロから考え直さなければなりません。 その中で、北海道の農業法人に就職するという選択肢は、働いて生き延びる数少ない現実的なルートの一つです。
農業は以下の特性を持つため、リストラや技術革新の影響を受けにくいと言えます:
- 経歴より体力、肩書きより誠実さが評価される世界
- AIやDXで奪われる心配の少ない現場作業
- 働きすぎず、季節の流れとともに暮らせるライフスタイル
一方で、ブルーカラー職業には多様な選択肢があります。 工場の部品製造や清掃業務などの職種も重要な選択肢ですが、機械化や技術革新によるリスクも伴います。例えば、自動運転技術の進展により自動車工場の閉鎖などの影響を受ける可能性もあります。
その点、健康と体力、実直な勤務姿勢が求められる農業は、報酬面では低いものの、比較的安定した就職先として価値を持つ選択肢です。
■ 「自分がどちらに立っているのか」を問う時期 ここで一度、立ち止まって考えてみてください。
自分は、会社に“まだ居られる側”なのか? それとも、すでに居られなくなりつつある側なのか?
もし後者だとしたら、「農ある暮らし」は逃げではありません。 むしろ、生き方を自分で選び直す行為です。
■ まとめ:会社に残れないなら、立ち去れ。 この社会において、戦略的に会社に残る「窓際貴族」になれるなら、それは間違いなく上位ルートです。 しかし、そこに乗れなかった人は、未練や見栄を捨て、第二の人生を“生きにいく”覚悟を持つべきです。
「農業なんて自分にできるのか?」 「収入は足りるのか?」
そんな疑問は、すべて“やる前の心の壁”です。 やってみた人たちが、意外と多くのものを取り戻しているのが現実です。
窓際貴族か、農ある暮らしか。 どちらを選ぶかで、あなたの10年後は大きく変わります。
第4章:「農業やれば何とかなる」は大間違い。本州ではもう成立しない
ここまで読み進めて、「農業なら自分でも何とかなるかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。 ですが、その前にどうしてもお伝えしておきたいことがあります。
■ 農業は“どこでやるか”で、天と地ほどの差がある たとえば、こう考えていませんか? 「北海道まで行かなくても、関東や九州など、今住んでいるところで始められないだろうか?」 その考え、非常に危険です。
今や本州以南の多くの地域は、農業の持続が構造的に困難なエリアに変わってしまっています。
■ 実体験:福岡での農業と“温暖化に負けた現実” 筆者自身、福岡で10年間、希少品種の「黄色いニンジン」を栽培しました。 糖度が10度近くにも達し、JA最大級の産直市場で月間売上1位を記録するほどの人気商品でした。
しかし、気温の上昇による暖冬の影響でニンジンが糖を蓄える“寒さの時間”が減り、味は次第に落ちていきました。同時に九州の柿農家も温暖化の影響で撤退を余儀なくされ、「農業を続けること自体が無理」という現実を目の当たりにしました。
■ “どこでも農業すればいい”という幻想を捨ててください 農業をやれば生きていける。それは過去の話です。 気候条件を無視して始めれば失敗は避けられません。
■ 北海道だけが“可能性を残す場所” 北海道には、まだ高温障害のリスクが低く、農業に向いた土壌や気候、広い土地があります。また、加温型露地ハウスや季節雇用モデルが整備され、初心者が挑戦しやすい環境も徐々に整っています。
さらに筆者自身の経験から、「事前のトレーニングや農業学校に頼るより、現場で実体験を通じて学ぶ方が効率的」と感じています。農業学校では果樹栽培に必要な施肥や害虫駆除などの授業が欠けていることが多く、結論から言えば時間を有効活用するためにも、実践の中で学び、試行錯誤する姿勢こそが成功への鍵です。
■ 健康と体力づくりの重要性 農業に飛び込む際に何より大切なのは、健康に気を配ること。特に休日の朝に早起きしウォーキングをしたり、日頃から体を動かす習慣を身につけることが、現場でのパフォーマンス向上に繋がります。
■ まとめ:北海道の農業は“生きるための手段” 農業は楽な道ではありません。しかし、“農業が成立する土地で挑む”ことが、最初の成功への第一歩です。 「農業やれば何とかなる」のではなく、「農業が何とかなる環境を選ぶこと」が、未来を切り開く鍵です。
まとめ:農ある50代の暮らしを “再起の場”に
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
私は、かつて福岡で10年間、自営農家をしていました。 だからこそ言えます。農業は決して甘い世界ではありませんし、農業法人への就職は、皆さんのすべての問題を解決する魔法の杖でもありません。
しかし、それでも今、この日本社会の現実を目にしたとき、「農業が生き直すための現実的な手段である」と確信する理由があります。
■ 農業は他責ではなく、自責の場 農ある暮らしは、他者に決断を委ねる世界ではありません。むしろ、自らの意志で選び、体を使い、自分自身の手で人生を作り直す喜びがある場所です。その責任を引き受ける覚悟が、やがて真の自由や満足感へと繋がります。
再起を図るのに必要なのは完璧な知識や事前準備ではなく、学び続ける姿勢と挑戦する意志です。実体験の中で試行錯誤し、自ら環境に適応していくことでしか得られない成長が、そこにはあります。
■ 自ら選び、自ら耕す人生の意義 健康な体を整え、地道な努力を重ねる。季節の変化とともに生きる生活は、都会生活では気づきにくい人間本来の豊かさを取り戻す機会となります。
たとえ厳しい道のりでも、それを自分で選んだという実感こそが、人生の道をしっかりと支えてくれるのです。
■ あなた自身が人生の主人公 このブログを読んだ方が、自分自身の手で情報を収集し、納得した選択をする。それが最も大切です。他人の助言や後押しによる選択では、自責の喜びを味わう機会を逃すかもしれません。人生は、他者ではなく、自らが描き、耕すべきものだからです。
■ まとめ:人生の地図を、再び描き直すために 農ある暮らしは、あくまで選択肢の一つに過ぎません。しかし、それを「逃げ場」ではなく「再起の場」として捉え、自ら選び取るならば、それはきっと新しい景色を切り拓く出発点になります。
迷い、立ち止まっている方が、この提案をきっかけに新たな地図を描き直し、自分だけの道を歩み始める。その一助となれれば、この文章を記した意味が報われると感じています。




50代は人生の転機です
まさか自分が!ということが
いつ起きても不思議ではないんです




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