全都道府県制覇、ドリンクバーの先駆け、千店舗達成──かつて“外食の王者”と呼ばれたすかいらーくグループは、今や時代の変化に取り残され、その主力ブランド「ガスト」は「オワコン化」による低収益体質が深刻化しています。
経営再建への道すじを探るなか、私たちが見つけた唯一の希望の光が──「しゃぶ葉」業態への転換とその後のフランチャイズ(FC)展開です。
この再建シナリオには、コメダ珈琲のフランチャイズモデルという最高のお手本があります。
しゃぶ葉は、すでにその条件を満たす“構造”を持っており、すかいらーくに残された“最後の切り札”として、この仕組みを本気で取り入れられるかどうか、その覚悟が今後の命運を分けます。
残された時間は、そう多くはないのです。
なぜコメダとドトールは強いのか──「軽い経営」の構造的強さ
逆広告詐欺、某コンビニチェーン最大手とは逆で、メニューの写真よりも大きな商品が提供されることで有名なコメダ珈琲。広々とした空間や家庭的な雰囲気など独特の世界観がありますが、企業経営的にはフランチャイズ型の戦略がうまく機能した「共存型モデル」の代表格として企業側もフランチャイズ側も利益をうまく配分される仕組みが注目されているんです。
コメダ珈琲のフランチャイズ店舗数と直営店店舗数
✅ 2020年2月期(2020年2月末時点)
- フランチャイズ店舗数:878店舗
- 直営店舗数:33店舗
- 合計店舗数:911店舗
✅ 2025年2月期(2025年2月末時点)
- フランチャイズ店舗数:1,023店舗(145店舗増加)
- 直営店舗数:60店舗(27店舗増加)
- 合計店舗数:1,083店舗(172店舗増加、FC比率:94.5%))
一方でドトールは株式会社ドトール・日レスホールディングスの傘下で、その中には「エクセルシオール カフェ」を含みます。スターバックスなどとは一線を画す本格的なコーヒーチェーン店で都心部や駅構内などを中心に展開している手ごろな価格も魅力なコーヒーが魅力的で、筆者も一番好きなお店ですが直営店がコメダ珈琲と比べると多い傾向にあります。
☕ 2020年3月末時点
ブランド名 | フランチャイズ店数 | 直営店数 | 合計店舗数 |
---|---|---|---|
ドトールコーヒーショップ | 912店 | 188店 | 1,100店 |
エクセルシオール カフェ | 23店 | 100店 | 123店 |
合計 | 935店 (FC比率:97.5%) | 288店 | 1,223店 |
※2020年3月末時点の店舗数は、ドトールコーヒーの月次開示情報に基づいています。
☕ 2025年3月末時点
ブランド名 | フランチャイズ店数 | 直営店数 | 合計店舗数 |
---|---|---|---|
ドトールコーヒーショップ | 805店 (107店舗減) | 268店 (80店舗増) | 1,073店 |
エクセルシオール カフェ | 109店 (86店舗増) | 16店 (84店舗減) | 125店 |
合計 | 914店 (FC比率76.2%) | 284店 | 1,198店 |
※2025年3月末時点の店舗数は、ドトールコーヒーの公式IR情報に基づいています。
ドトールのフランチャイズ店舗数は一部直営店舗への切替を進めておりますが、その他には人員確保が困難であったことや不採算店舗が撤退したことも理由としてあげられます。
単なる“店舗数の増加”ではなく、「本部の販管費を極限まで圧縮しながら売上を伸ばす」そして「フランチャイズ店にも利益がしっかりと残せる」という、非常に洗練された経営構造の結果、コメダ珈琲ではフランチャイズ店舗数が着実に増えているのです。
このビジネスモデルは他業界でも注目すべき成功した仕組みであると思います。
コメダ珈琲は、フランチャイズ展開を最大限に活用していることで“本体の販管費負担を軽量化した経営モデルを実現し、高収益を実現していることです。
詳しく、次の章で見ていきましょう。
数字が語る「軽い経営」──販管費・利益・FC構造の決定的違い
直近(2024年度)の決算データをもとに、2社の構造を比較してみましょう。
指標 | コメダHD(2025年2月期) | ドトールHD(2025年3月期) |
---|---|---|
売上高 | 470億円 | 1,406億円 |
売上原価 | 約305億円(原価率:約65%) | 約906億円(原価率:約64%) |
販売管理費 | 約60億円(販管費率:約13%) | 約473億円(販管費率:約34%) |
営業利益 | 約85億円(営業利益率:約18%) | 約73億円(営業利益率:約5%) |
店舗数(国内) | 1,023店舗(うち直営:39店舗) | 1,283店舗(うち直営:429店舗) |
フランチャイズ比率(国内) | 約96% | 約67% |
売上高ではドトールがコメダの3倍以上ですが、利益は逆転しています。
その決定的な要因は「販管費率の差(コメダ13% vs ドトール34%)」です。
この差を生み出しているのが、両社のフランチャイズ比率の構造的違いです。
コメダは約94.5%がFC店舗、ドトールは約76.2%──この約20%のFC比率の差が、十億円単位の営業利益の違いとなって表れているのです。
つまり、「どれだけ売るか」ではなく、効率よく、「どれだけ軽く稼ぐか」が問われるときは、FC重視に軍配が上がるのです。
コメダのフランチャイズは搾取ではない──「共存型モデル」の証明
もちろん、FCモデルは単に「本部の販管費を減らせるから良い」という話では終わりません。
コメダのFC店舗では、人件費・賃料・光熱費などの販管費はFCオーナーが自ら負担する構造で、仕入れはスケールメリットを生かした本部から非常に安く提供されています。
オーナー自身が利益を確保できている「儲かる仕組み」だからこそ、コメダは店舗数を年々増やしているのです。
これは、コンビニ業界のように「本部だけが得をする構造」により店舗数が減少しているモデルとは一線を画し、店舗は自然に増えていく、「持続可能なFCビジネスの真の証明」なのです。
「誰でも加盟できるわけじゃない」──コメダFCの審査は非常に厳しいんです!
実は、コメダ珈琲のフランチャイズオーナーになるには、かなりの審査基準をクリアする必要があります。
たとえば:
- 十分な広さの駐車場付き土地を用意できること(郊外型の大型物件が主流)
- 数千万円単位の自己資金または信用力があること
- 飲食業経験や、複数店舗を見られる人的体制があること
- 本部研修への対応、現場を理解する意思を持つこと
これは、単に「誰でも加盟OKで拡大すればいい」という考え方とは真逆です。
本部としても、“オーナーが儲からなければFCは続かない”という現実をよく理解しているのです。
FC権利を買ってくれる人が本部にとって一番のお客さんであるコンビニモデルとは大きく異なるのです。
すかいらーくHDが「しゃぶ葉のFC化」で目指すべき姿は、この「健全な持続拡大可能な仕組み」にあると提言します。
数値では見えない「リアルな好み」──意外と根強い“ドトール派”
コメダはフランチャイズ戦略で拡大を続けていますが、
実際のユーザーの声を見ると、「好きなのはドトール」という人も少なくありません。
人気YouTuber・脱・税理士スガワラくんの動画では、「ドトールとコメダ、どちらが好きですか?」という問いに対し、上位コメントではコメダ推しは見られず、ドトール派の声が相次いでいました。
- 「家の周囲はコメダばかりだけど、自分はドトール派」
- 「コメダは混んでるし、あれで休憩にはならない」
- 「ドトール利用者の方が年収高いというデータもある」
ちなみに筆者自身も、「ドトールの中途半端な狭さとコーヒーが大好き」です。
広すぎず、気取らず、サッと飲んで出られる“実用の店”という印象があります。
拡大路線のコメダ、日常密着のドトール。
数字ではコメダが勝っていても、「個人の好き嫌い」には別のロジックが働いているのです。
では、この仕組みを「しゃぶ葉」に当てはめたら?
しゃぶ葉は、すかいらーくグループの中でもっとも“省人化”と“定型化”が進んだ業態です。
- ドリンクバー・サラダバー・デザートコーナーなどがセルフ
- 調理が簡略化されており、現場のスキル差が収益に響きにくい
- 客単価がガストより高く、シンプルな価格体系(食べ放題)で回転も安定
つまり、しゃぶ葉はFC展開に適した構造をすでに持っているのです。
この「ほぼ完成された仕組み」を活かし、コメダ型FCモデルへと転換することができれば、すかいらーくグループの販管費率も大幅に改善可能です。
✅ すかいらーく、実は今、着々と準備を進めているのかも…
すかいらーくホールディングスの中期経営計画には、「フランチャイズ化を積極的に進める」といった文言は見当たりませんが、既存店の「業態転換」や「店舗リモデル」によって、収益構造の改善を目指す戦略が前面に出されています。
実際、2023年の実績では──
- しゃぶ葉に業態転換した店舗の売上は、転換前比183.5%
- 一方、ガストを外観改装しただけのときの効果は、+4.6%程度
この差は圧倒的です。
しかも、リモデルには1店舗あたり数百万円規模のコストがかかるのに対し、
しゃぶ葉モデルは人件費の削減+客単価の向上+再現性の高さという“構造からの改善”を伴います。
あくまでも推測ですが、すかいらーくがFC化を公言していないのは、
- 「直営中心=ブランドの安定感」と評価されてきた過去
- 現場人員の再配置・雇用安定などへの配慮
- 株主・投資家からの警戒を避けたい心理
など、経営判断としてあえて“黙って進める”ほうが得策だと考えている可能性があり、その準備は既に整っていると考える方が妥当な気がします。
皆さんはどう思われますか?
ガストではできない、しゃぶ葉だからこそ可能な構造改革
なぜガストでは同じ戦略が取れないのか?
- 厨房オペレーションが複雑(多品種メニュー)
- 客単価が安く、薄利多売でしか収益が出ない
こうした構造上の特性から、ガストは直営中心とせざるを得ません。
更に致命的なのはガストにはFCとして売り込むだけの魅力的なメニューもない、すかいらーくが「ガストから業態転換を積極的に行っている」戦略を打ち出すことで、半ば自ら公認している「オワコン」の業態だからです。
一方、しゃぶ葉は“人に頼らず、仕組みで回す”モデルで、テレビCMなしでも集客できる優良コンテンツなのです。
すかいらーくHDにとって「しゃぶ葉」はコメダと同じ方向に舵を切れる唯一のブランドと言っても過言ではありません。
まとめ:ゼンショーと吉野家、そして既存競合の脅威
一見、しゃぶ葉には直接的な競合が少ないように見えるかもしれませんが、実際には既に数多くの強力な競合や潜在的なライバルが存在しています。
例えば、ゼンショーHDは「久兵衛屋」や「牛庵」といったしゃぶしゃぶ業態を展開しており、フランチャイズ展開も得意としています。また、吉野家HDが展開する「しゃぶしゃぶ どん亭」は、牛丼ビジネスで培った調達力や価格競争力が際立っています。
さらに「しゃぶしゃぶ温野菜」(コロワイド)、「ゆず庵」(物語コーポレーション)、「しゃぶ菜」(クリエイトレストランツHD)といった、既に全国展開しているブランドも多く存在します。これらの競合は、単に新規参入の可能性を懸念する対象ではなく、まさに今「競争の場に立っている」現実を示しています。
彼らが「しゃぶ葉」の一人勝ちに興味を示し、勝機があると判断すれば一気に市場に雪崩れ込んでくる事態も容易に想像できます。
このような状況を踏まえると、すかいらーくがガストからしゃぶ葉への業態転換を機にFC転換する施策、その実施のためのタイムリミットは刻一刻と迫っているのかも知れません。今後のすかいらーくの動向、そして競合他社の戦略にも注目です。




すかいらーくHDの取り組み、
ライバルたちも虎視眈々です!
近々、重大発表があるかも?




企業分析は大好きな領域です!
「この会社はどうなの?」っていう
リクエストがあったら教えてくださいね!
👉 お問い合わせ – Makoto-Lifecare
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