「バーミヤンでランチを食べながら、午後の会議の資料の最終チェックでも…」
「夢庵で蕎麦を食べたら、そのまま転職エージェントと次回の面接に向けた打ち合わせを…」
そんな日常が、もうすぐ終わりを告げることになりそうです。すかいらーくグループが、傘下のバーミヤン、夢庵、ステーキガストなど約2700店舗で提供している無料Wi-Fiサービスを、2025年6月末をもって終了すると発表しました。

このニュース、単なるサービス廃止と捉えるのは早計です。私たち消費者にとっては少し不便に感じるかもしれませんが、これは「コメの価格高騰」をはじめ、人件費の上昇や光熱費のアップなど、利益がコストに圧迫されている厳しい経営環境の中で、すかいらーくグループが下した、非常に合理的かつ賢明な経営判断であると私たちは考えます。
なぜ今、無料Wi-Fiを終了する経営戦略が必要なのか?
すかいらーくグループは、今回の無料Wi-Fiサービス終了の理由として、主に「近年の通信環境の変化や店内設備の見直しを進める観点からサービスの終了を決定した」と説明しています。もちろん、これは紛れもない事実でしょう。
しかし、私たちはこの裏に、より深く、かつ多くの飲食店が抱える共通の課題に対する「一石二鳥」ならぬ「多鳥」の戦略が隠されていると見ています。
1. コスト削減と効率化の徹底
無料Wi-Fiサービスは、導入すれば終わりではありません。
- 初期導入コスト: アクセスポイントやルーターの購入、配線工事など、まとまった初期投資が必要です。
- ランニングコスト: インターネット回線費用、機器の電気代、定期的なメンテナンス費用、故障時の修理費用など、継続的なコストが発生します。
- セキュリティ対策費用: 公衆Wi-Fiには常にセキュリティリスクが伴うため、その対策にも費用がかかります。
これらのコストは、特に利益率がシビアな飲食業界にとっては決して小さくありません。今回のWi-Fi撤去は、これらの無駄なコストを徹底的に削減し、経営の効率化を図るという明確な意思表示と捉えられます。
2. 最も重要な「回転率」の向上
これが、多くの飲食店経営者が無料Wi-Fiに頭を悩ませてきた最大の理由でしょう。無料Wi-Fiの存在は、図らずも顧客の滞在時間を長期化させる誘因となっていました。
- 学生がレポート作業に長時間励む。
- ビジネスパーソンがリモートワークの拠点にする。
- 時間を潰したい人がダラダラとスマホをいじる。
- 外国人観光客の集合場所に指定され大声で騒ぎ続ける。
これら「食事」以外の目的での長時間滞在は、特にランチタイムやディナータイムといったピーク時に深刻な影響を及ぼします。席が埋まっているにもかかわらず、売上に繋がらない状態が続く。これは、飲食店にとって「機会損失」そのものです。
無料Wi-Fiをなくすことで、顧客が食事と会話という「本来の目的」に集中し、席の回転率が向上することが期待されます。より多くの顧客に食事を提供できるようになることで、結果的に店舗全体の売上アップに貢献するでしょう。
3. 顧客体験の最適化と従業員の負担軽減
「Wi-Fiが繋がらない」「速度が遅い」といった顧客からのクレーム対応に、従業員が時間を取られることも少なくありませんでした。Wi-Fiサービスの廃止は、こうした従業員の余計な業務負担を軽減し、本来の接客や調理といった業務に集中させることにも繋がります。
また、Wi-Fiに起因する混雑が解消されれば、食事を目的とした顧客はより快適に過ごせるようになり、結果として顧客満足度の向上にも寄与する可能性を秘めています。
他の飲食店チェーンも追随するのか?
すかいらーくグループの今回の動きは、飲食業界全体に大きな波紋を呼ぶことでしょう。
「ウチもWi-Fi、本当に必要なんだろうか?」
多くの飲食店経営者が、今、自社の無料Wi-Fiサービスの是非を真剣に検討し始めるはずです。特に、回転率を重視するファミリーレストラン、ファストフード、そして一部のカフェ業態においては、すかいらーくグループの決断を追随する動きが出てくる可能性は十分に考えられます。
実際、ドトールコーヒーなどのカフェチェーンでは、混雑時には滞在時間制限を設けるなど、既に回転率維持のための対策を講じています。多くの企業が、「他社が導入したから」という近視眼的な対抗意識だけでWi-Fiサービスに投資してきたのですが、実情はコストとデメリットが上回ってしまっていたと感じているのではないでしょうか。
まとめ:賢明な「引き算」の経営戦略
今回のすかいらーくグループの無料Wi-Fiサービス終了は、まさに「引き算の経営戦略」の好例と言えます。不要なコストを削減し、回転率という最も重要な指標を改善することで、厳しい経営環境の中でも持続可能な成長を目指す。
これは、顧客への直接的な「値上げ」という形ではなく、サービス内容の見直しという形で、企業努力を通じて顧客への負担を最小限に抑えようとする賢明な判断と言えるでしょう。
私たち消費者は、無料Wi-Fiが使えなくなることに対して一時的な不便さを感じるかもしれません。しかし、これは私たちがより手頃な価格で、より快適に食事を楽しめる環境を維持するための、企業努力の賜物と理解すべきかもしれません。
すかいらーくグループがWi-Fiを導入した2012年と比較すると、格安SIMの普及などにより無料Wi-Fiがなくても手軽にデータ通信ができるようになったことは読者の皆さんも実感されていると思います。
本発表にあたって消費者から大きな反発や不買運動などが生じるとは思えず、むしろ各店舗の人気メニューの価格帯が維持されるのであれば好意的な反応が期待できるのではないでしょうか?
すかいらーくグループ、そして飲食業界の動向に、引き続き注目していきましょう。

FAQ:すかいらーくWi-Fi終了の背景と影響
Q1. なぜ、すかいらーくグループは無料Wi-Fiを終了するのですか?
A. 主な理由は「通信環境の変化」と「店内設備の見直し」ですが、実際にはコスト削減・回転率向上・業務効率化という複数の経営的課題への対策が背景にあります。Wi-Fiの維持にはランニングコストやセキュリティ対策費用がかかり、滞在時間の長期化による機会損失も無視できません。
Q2. 無料Wi-Fiをやめると売上が下がるのでは?
A. むしろ逆で、「回転率が上がれば売上は増える」という飲食業界の基本原理が働きます。Wi-Fiを使って長居する客よりも、短時間で回転する通常の食事利用者の方が利益に貢献するため、店舗運営としては合理的な判断といえます。
Q3. 他の飲食チェーンもWi-Fi撤去の動きに追随するのでしょうか?
A. その可能性は十分あります。特にファミレスやカフェ業態では、回転率の低下による収益悪化が以前から問題視されており、すかいらーくの決断が1つの契機になると見られます。既に一部カフェでは滞在時間制限を導入するなど、見直しの動きは進んでいます。




すかいらーく、中期経営計画達成に向けて
店長給料1000万円に上限アップに続き、
少しずつ具体策を出してきましたね。
次の施策にも注目です!




すかいらーくを始め
飲食チェーン店の企業分析も
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