まとめ記事 畜産業と酪農業の「疲弊しきった現実」と「厳しい未来」 

まとめ記事 畜産業と酪農業の現実と未来 

日本の畜産業と酪農業は今、大きな岐路に立たされています。

酪農、養鶏、養豚といった主要分野のいずれにおいても

物価高騰によるコスト上昇などによる「経営環境の悪化」

鳥インフルエンザ・豚熱などの「感染症リスク」

激化する「国際競争」

さらには深刻な「後継者不足」という

複合的な問題が重くのしかかっているのは皆さんご存知のことであろうと思います。

これまで個別に取り上げてきた各分野の課題を総括し

日本の畜産業が直面する共通の困難、

そして持続可能な未来のために求められる対応策について

あらためて整理してみたいと思います。

皆さんが忙しい生活の中でも

食材供給の背景にある人々のご苦労に

寄り添う気持ちを思い起こしていただく

そんな切っ掛けとなる記事となれば幸いです。

パンチです

どうぞ最後までご覧くださいね

目次

日本の酪農の課題 大山牧場、ファーマーズHDの転落

2024年10月、香川県の名門「大山牧場」が事業を停止し、

自己破産申請の準備に入ったというニュースは、

全国の酪農家や関係者に大きな衝撃を与えました。

ブランド化の成功例として知られ、

「うしおじさん」の愛称で親しまれてきた同牧場でさえ、

コロナ禍による売上減少や飼料・燃料費の高騰を乗り越えることができなかったのです。

大山牧場はジャージー牛に特化し、

高品質な牛乳・乳製品の製造と観光事業を融合させた

“六次産業化”の先駆け的存在でした。

それでもなお倒産に至った事実は、

日本の酪農が置かれている現実の厳しさを物語っています。

とりわけ注目すべきは、大山牧場が導入していた取り組み―

六次産業化、観光牧場の開放、環境配慮型の飼育、地域連携、高品質商品開発が、

一般的に「酪農の安定経営のための成功モデル」とされていた点です。

大山牧場の破綻は、従来の“正解”が通用しなくなってきているとも言えるのです。

一方で、生き残りの道を模索する企業も存在します。

岡山県倉敷市のファーマーズホールディングス(以下 ファーマーズHD)は、

野村キャピタル・パートナーズとの資本提携を通じて、

「大資本との連携」という新たな戦略に踏み出しました。

持続可能な経営には外部から“ビジネスパートナーとして評価される企業”であることが

一つの生き残り戦略であると考えられていました。

しかしながら2025年7月24日、

そのファーマーズHDが民事再生法適用申請した

というニュースが飛び込んできて、国内の畜産業者に衝撃を与えました。

日本の酪農が今後も地域経済を支える存在であるために、

どのような選択肢があるのか―

「大山牧場」と「ファーマーズHD」の事例から探っていきます。

養鶏業の課題 イセ食品の復活

2022年、鶏卵業界の最大手であるイセ食品の

会社更生法適用申請の報せは業界内外に衝撃を与えました。

「森のたまご」などのブランドで知られる同社の倒産は、単なる経営不振にとどまらず、

日本の養鶏業が抱える構造的な課題を浮き彫りにしました。

過剰な設備投資やM&A、そして経営の私物化といった問題が重なり、

同社は最終的に453億円もの累積赤字を抱えました。

債権者との対立も深刻化し、自力再建が困難となる中で、異例の展開が起こります。

メインバンクをはじめとする金融機関が、企業再生の主体として動き出したのです。

このケースでは、「会社を潰す」のではなく、

「社会的インフラとしての鶏卵供給を守る」ことが重視されました。

結果として、外部主導でスポンサー企業による事業承継が実現。

雇用は守られ、卵の流通も途絶えることはありませんでした。

この一連のプロセスは、養鶏業が単なる一企業の問題にとどまらず、

社会の基盤を支える産業であるという事実を改めて突きつけます。

同時に、金融機関が再建のキープレイヤーとして機能しうることを示す、

極めて象徴的な出来事でもありました。

酪農と同様に、養鶏においても「持続可能性」を見据えた経営の在り方が問われている今、

イセ食品の事例は重要な教訓を提供してくれます。

養豚業界 神明畜産の経営破綻

神明畜産の倒産事例は、

畜産業界における大規模化と効率化を追求するリスクを浮き彫りにしました。

2022年、神明畜産は豚熱の発生により約5万6,000頭の豚を殺処分し、

その後、資金繰りの悪化を受けて民事再生法を申請しました。

この一件は、拡大戦略によるリスクの過小評価がどれほど危険であるかを示しています。

大規模化の落とし穴

神明畜産は、大規模な集約型養豚場を構築し、効率化を目指していました。

しかし、豚熱のような感染症が発生した際を想定したリスク管理が不十分であったため、

病気が施設内で拡大し、事業が立ち行かなくなりました。

集約型生産は一見効率的に見えますが、

感染症や自然災害などのリスクに対して非常に脆弱であることが証明されたのです。

政府の補助金と過信された拡大戦略

神明畜産の拡大には、政府からの補助金や支援も大きな影響を与えたと考えられます。

効率的で高収益をあげるビジネスモデルが農業の成功例の「象徴」となった結果、

リスクの高い投資が過小評価され、拡大路線へと加速度を上げて突き進んでしまったのです。

しかし当然のことながら、過度な拡大戦略が経営破綻を招く原因となり、

結果的に大きな損失を被る事例となったのです。

再建の難しさと教訓

2022年9月に民事再生法が申請された後、再建の道を歩み始めましたが、

その過程は依然として不透明です。

神明畜産の事例から学ぶべきことは、スケールメリットの追求ではなく、

リスク管理や分散戦略、そして感染症対策を強化することの重要性です。

特に、自然災害や感染症といった予測困難なリスクに備えることが、

今後の畜産業界にとって不可欠な要素となります。

しかし収益体制との両立は非常に大きな宿題となっているのです。

グローバル視点で読み解く酪農

酪農は長きにわたって私たちの暮らしに寄り添い、日々の食卓を支えてきました

けれども近年、その姿が世界各地で大きく変わりつつあります。

価格の高騰、環境問題、労働力不足、そして政策の転換―さまざまな要因が絡み合い、

私たちの食卓に並ぶ牛乳やチーズ、バターの未来は決して安泰とは言えません。

日本をはじめとする主要国における酪農の現状と課題、

そしてこの先に待ち受ける未来像について、多角的な視点から探っていきます。

1. 日本の酪農

  • 課題: 高齢化、後継者不足、飼料価格高騰、輸入依存、健康志向やライフスタイルの変化による消費減少。
  • 経営状況: 補助金依存が続いており、経営は厳しく、廃業する農家も増加。

2. ニュージーランドの酪農

  • 政策: 「げっぷ税」の導入検討が生産コストを上げ、利益圧迫の懸念。
  • 影響: 環境保護のための政策は歓迎されるが、経営への負担が大きい。

3. オーストラリアの酪農

  • 状況: 利益が出ないため、酪農から撤退する農家が増加。
  • 背景: 飼料費やエネルギーコストの増加、乳価の上昇がコスト増に追いつかず。

4. 中国の酪農

  • 変化: 小規模な家族経営から、大規模集約型システムに転換。
  • 影響: 大型施設化が進み、生産量は増加したが、環境や地域社会への影響が懸念されている。

5. アメリカの酪農

  • 政策: 州ごとの補助金や価格調整政策により、大規模農家は安定しているが、小規模農家は淘汰されつつある。
  • 課題: 環境規制や動物福祉が強化され、技術導入と投資が必要。

映画「牛なき世界」視聴に先立って

Yahoo Japan ニュースによると、映画『牛なき世界』については次のように語られています。

同映画の製作者は、ジャーナリストのミシェル・マイケル氏とブランドン・ウィットワース氏。牛はげっぷで温室効果ガスを排出するため、気候変動問題への関心が高まる中で国際的に牛に対する風当たりが強まるが、「世界に牛がいなくなったら、どのような影響が及ぶか」を検証するために製作された。

映画では、牛が地球に与える温室効果の他、牛が担っている環境維持の役割や、動物性たんぱく質の価値、宗教的役割などにも焦点が当たる。各国の研究者らが登場し、科学的根拠に基づいて考察していく。

この作品を私もまだ見てはいないのですが、

「もし牛がこの世からいなくなったら、私たちの暮らしや社会はどう変わるのか?」と考えてみました。

農業・食文化・環境・社会といった幅広い分野において、牛が果たしている役割、

そしてその代替案や課題について分かりやすくまとめてみましたのでどうぞご覧ください。

肉用牛でも日本一へ──北海道が鹿児島県を抜いた日


2023年、日本の畜産界において大きな節目となる変化がありました。

これまで63年もの間、肉用牛の出荷額で全国1位の座を守ってきた鹿児島県を、

北海道が初めて抜いたという出来事です。

一昔前までは乳牛は多いけれど肉牛のイメージは強くなかった北海道の快挙には、

独自の生産体制や畜産戦略、そして農業従事者たちの不断の努力があったのです。

農林水産省が公表した2023年の生産農業所得統計によると、

北海道の肉用牛の産出額は1,224億円(前年比21億円増)となり、

鹿児島県の1,208億円(前年比20億円減)をわずかながら上回りました。

この逆転劇は単に生産量の増減にとどまらず、

北海道が長年にわたり取り組んできた酪農との連携による交雑種の安定生産や、

広大な土地を活かした効率的な飼育体制の成果と言えるかと思います。

北海道は肉用牛の飼養頭数においても全国最多ですが、

その多くを占めるのは黒毛和種に乳牛(ホルスタイン)を交配した「交雑種(F1)」と呼ばれる肉用牛です。

実はこれが道内の肉牛生産の中核を担っている秘密なのです。

ホクレンを通さないと補助金ゼロ?

「ホクレンが農家を縛っている」

「補助金目当てに全量出荷を強いられている」

こういった声がネット上で広まる背景には、制度や価格の仕組みが分かりづらく、

現場の実態が十分に伝えられていないという構造的な問題があります。

そして実際の酪農経営は、売上が5,000万円近くあっても経費がそれを上回り、

赤字を抱えながら貯金を切り崩して生活する──そんな“ギリギリの経営”が現実です。

そのなかで、ホクレンは農家にとって重要な流通インフラであり、命綱でもあるのですから、

その存在は「敵か味方か」といった単純な対立ではなく、

「制度の維持と改善の鍵を握る存在」として位置づけるべきかも知れません。

しかし、ここまで構造が複雑化し、制度不信が広がっているのであれば──

いっそホクレンを一度解体して、農家に必要不可欠な部分のみ、

つまり、「流通インフラに特化した中立的な新組織」として再出発させるという選択肢も、

真剣に検討すべき時期に来ているのかもしれません。

農家が主役となってサービスを選び、自立した経営判断ができる柔軟な仕組み。

それこそが、これからの共存のかたちではないでしょうか。

おわりに 

畜産業や酪農業が抱えるさまざまな課題に触れてきましたが、

私たちが日々享受している乳製品や肉製品は、

こうした困難と隣り合わせで生産されていることを忘れてはならないですね。

私たちが当たり前に手にしている食材は尊い命から譲り受けたものであり、

その背後には多くの人々の努力と工夫があることを忘れない大人で居続けたいものです。

しかし、その生産現場は既に疲弊しきってます。

私たちに出来ることはなんでしょうか?

どうぞ皆さんご自身に問いかけてみてください。

🔍 なぜこの記事を書くのか?

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パンチです

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