【読書レビュー】朝ドラ『とと姉ちゃん』のモデル・大橋鎭子の生き方に迫る!

【読書レビュー】朝ドラ『とと姉ちゃん』のモデル・大橋鎭子の生き方に迫る!

2016年に放送されたNHKの朝ドラ「とと姉ちゃん」。 女優・高畑充希さんが演じた主人公・小橋常子のモデルとなったのが、大橋鎭子(しずこ)さんという女性です。

私はこのドラマをリアルタイムでしっかり見たわけではありませんが、2025年5月5日からの再放送が決まったという情報を耳にし、図書館で『「暮しの手帖」とわたし』という一冊の本を手に取りました。

そしてページをめくるうちに、こう思いました── 「これは、単なる女性ファッション雑誌社長のサクセスストーリーではない。人としての生きざまの話だ」と。

既に「とと姉ちゃん」を楽しんだ方も、 再放送で初めてこの人物に触れる方も、 今の時代に“信頼”や“真っすぐさ”に飢えているなら、 この本から想像以上の「気づき」を得られるはずですよ。

朝ドラの放送終了後、「ととロス」という言葉が流行したそうですが、それも頷ける、魅力あふれる女性の物語です。

今回は、読書の過程で私が感銘を受けたエピソードを中心に、 「大橋鎭子さんとは、どんな人だったのか?」 「彼女が遺した仕事と生き方には、どんな意味があるのか?」 そんな問いへの答えを、できる限り丁寧にお届けしたいと思います。

目次

編集者としての原点──大橋鎭子という女性

『暮しの手帖』の創業者である大橋鎭子さんは、もともと編集の世界を志していたわけではありません。 女学校を卒業後、家計を支えるために選んだのが「日本興業銀行」への就職でした。

当時、多くの女性は卒業後すぐに結婚して家庭に入るのが一般的だった時代。 しかし、父を早くに亡くし、「一家の大黒柱」として母と妹を支えようと決意した彼女は、職業人としての人生を歩み始めます。

配属先は調査課。新聞記事の切り抜きや資料整理といった地味な作業も多かったそうです。 けれど彼女は、ただの雑用としてこなすのではなく、「どの記事を選び、どう見せるか」といった編集の視点を磨いていきました。

この姿勢と編集技術が評価され、日本読書新聞という出版社で採用されることに。 興銀時代に培った「記事を見極める目」「読者に伝える工夫」は、ここで本格的に活かされることになります。 振り返れば、興銀での仕事は、編集者としての原点そのものだったのです。

この読書新聞時代、大橋さんはのちにノーベル文学賞を受ける川端康成氏と出会います。 寄稿の依頼に対し、川端氏は快く了承してくれたものの、約束の締切が過ぎても原稿は届かず、「また数日後に来てください」と言われること4度。

そして迎えた5回目の訪問でも、原稿は完成していませんでした。 「今回はきっと大丈夫」「今日は受け取れる」と信じていた分、その反動も大きかったのでしょう。 いよいよダメかもしれない──そう思った瞬間、彼女はこみ上げるものを抑えきれず、涙がこぼれてしまったのだそうです。

それを見た川端氏は「書いてあげる、書いてあげる」と机に向かい、目の前で原稿を書き上げてくれたそうです。これが縁となり康成は、のちに創刊される『暮しの手帖』の創刊号にも快く寄稿してくれたのです。

つまり彼女は、決して強く迫るのではなく、誠実さと努力で人を動かす人だったのだと思います。 目立たず、けれど真面目で、その姿勢が信頼へとつながっていく── 彼女が持つ編集者としての「原風景」は、この時期にすでに形づくられていたのかもしれませんね。

戦後の混乱期、大橋鎭子の決断──『暮しの手帖』誕生への道

出版社での経験を積んだ大橋鎭子さんは、戦後の混乱期、母と妹の生活を支えるために何か新しい仕事を始めたいと考えるようになります。
物資も希望も不足する時代に、「暮らしを少しでも楽しく、豊かにしたい」と願う女性たちのための雑誌を作ろう──
それが、のちの『暮しの手帖』につながる最初のビジョンでした。

まだ創刊前の段階で、彼女の頭の中には方針がはっきりと描かれていました。
──「女の人に役立つ雑誌」「衣・食・住をなるたけ具体的に」「読めば気分が明るくなる雑誌」
自分が戦時中に思うように勉強できなかったこと、知りたいのに情報がなかったこと──
その“空白”を埋めるように、自ら学びながら編集するというスタイルが、自然と形づくられていったのです。

その志に力を貸してくれたのが、のちに初代編集長となる花森安治(はなもり やすじ)です。
朝ドラ『とと姉ちゃん』では、花山伊佐次(はなやま いさじ)という名前で登場し、唐沢寿明さんが演じた人物として印象に残っている方も多いでしょう。

前職の編集長から紹介された花山は、類まれな雑誌編集技術を持ち合わせた人物として大橋さんも良く知ってたそうです。ただ、この仕事を引き受けるにあたっては決まりかけていた先約があったにも関わらず、大橋さんの親孝行が起業の目的と知り手伝うことを決心したそうです。

彼の「出版社をやるなら銀座で」との助言を受け物件を探したところ、銀座八丁目(ほぼ新橋)に同級生の父が持つビルが偶然空いていたという幸運にも恵まれ、そこに事務所を開くこととなります。

また保険の外交員の妹の得意先から、現在価値にして400~500万円もの出資金を預かってくるという奇跡のような出来事があったり、紙もインクも配給制だった時代に印刷会社の社長も「この若い女性の熱意なら」と引き受けてくれたり──まるで物語のようにトントン拍子で進んでいくんです。

けれど、そこには“大橋鎭子という人間”の魅力が確かにあるので、大橋さんをみんなが手助けしたくなるの当然だよね、という気持ちに自然となるのです。

そして完成した第一作は『スタイルブック』という実用誌ですが、花森の助言に従い新聞広告を打つと、全国から郵便局を通じて現金書留がぎっしり詰まった布袋が次々届くという、驚きの反響を得ました。

しかし、いつまでも順風満帆だったわけではありません。
『暮しの手帖』創刊後、競合誌の出現や売れ行きの鈍化により資金が底をつき、倒産寸前に。
藁にもすがる思いで、以前勤めていた日本興業銀行に相談に行きますが、重役には「女の子に大金は貸せない」と一蹴されてしまいます。

それでも、彼女と共に働いていた仲間が声を上げました。
「私たちの退職金を抵当に入れるので、どうか貸してあげてください」と。
こうして得た20万円──今の価値にして約2,000万円の融資が、雑誌の命をつなぎます。

どこまでが運で、どこからが人柄なのか分かりませんが、「人が動くほどの信頼」を彼女が日々積み重ねていたということに間違いはありません。

『暮しの手帖』が生き残るために──衝撃の一編

『暮しの手帖』は、衣食住の実用情報だけでなく、読者の心を豊かにするエッセイや随筆にも力を注いできた雑誌でした。 編集長・花森安治と大橋鎭子が何度も語り合ったのは、「読者が思わず“あっ”と驚く原稿が必要だ」という想い。 雑誌を続けるには売上も必要です。そのためには、「読まれる理由」を明確に打ち出す必要がありました。

そんな中、大橋さんが目をつけたのが、元皇族・東久邇成子(ひがしくに しげこ)様。 昭和天皇の第一皇女として生まれ、戦後は皇籍離脱し、民間人として暮らしていた方です。

「皇族の暮らしって、どんなものなのかしら」 大橋さんがふと漏らした疑問に、花森は即座に応じます。 「行ってきて、寄稿をお願いしてきなさい」それはほとんど命令にも似た依頼だったそうです。

成子様は快く執筆を引き受けてくれました。 けれど、原稿がなかなか仕上がらない。川端康成の時と同じように、大橋さんは何度も足を運びます。

ようやく預かった原稿を花森に見せると、「なんだこれは。書き直しです」と一刀両断。 気まずい思いを抱えながら大橋さんは再び通い詰め、ようやく掲載にこぎつけたのが、『暮しの手帖』第5号に載った成子様の随筆「やりくりの記」でした。

内容は衝撃的なものでした。 「皇族だからといって、特別な配給や贅沢な暮らしがあったわけではない」 庭で育てた野菜や、ハコベなどの野草を食べる毎日。配給の芋ばかりの食事。 庶民と何ら変わらぬ、慎ましい生活の実態が、静かな言葉で淡々と綴られていました。

この原稿は、当時の読者にとって衝撃でした。 “上流階級の人々”もまた、同じように戦後を生きている── そのリアリティが、読者の心を大きく揺さぶったそうです。

この記事が掲載された第5号は117,500部という驚異的な売れ行きを記録し、 『暮しの手帖』という雑誌が、“生き残る道”を自らの力で切り開いた瞬間でした。

まとめ:『とと姉ちゃん』再放送──大橋鎭子の歩みを振り返る

2016年に放送されたNHKの連続テレビ小説『とと姉ちゃん』は、主人公・小橋常子(演:高畑充希)のモデルとして、大橋鎭子の人生を描き、多くの視聴者の心をつかみ放送終了後は「ととロス」という言葉まで流行しました。

そして2025年5月5日からNHK総合で再放送が始まることが決まりました(毎週月曜〜金曜 12:30〜12:45、全156回) 。

この再放送を機に、改めて大橋鎭子の歩みを振り返ることは、現代に生きる私たちにとっても多くの示唆を与えてくれると思います。彼女の人生は、戦後の混乱期においても、誠実さと行動力をもって道を切り開いていった記録です。

『暮しの手帖』は広告を一切掲載せず、読者の信頼を第一に考える編集方針を貫いてきました。その結果、1970年代には発行部数が90万部に達し、2015年の印刷部数調査でも約19万部を維持していました 。

このような成功は、読者が求め、支えてくれたからこそ実現したものであり、大橋鎭子の信念と努力の賜物です。

彼女の生き方から学べることは、誠実に、そして自分の信じる道を貫くことの大切さです。困難な時代においても、周囲の人々との信頼関係を築きながら、自らの信念を持ち続ける姿勢は、現代に生きる私たちにとっても大きなヒントとなるでしょう。

2025年の今、出版業界は厳しい状況にありますが、『暮しの手帖』はその中でも堅調な発行部数を維持し続けています。これは、大橋鎭子が築いた信頼と誠実さが、今もなお読者に支持されている証です。

彼女の物語は、ただの感動物語ではありません。現実の中で誠実に生きた、ひとりの女性の記録です。そして私たちは、そこから「生き方のヒント」を受け取ることができると思います。

リアルタイムで『とと姉ちゃん』を見た方は、10年ぶりにあの懐かしい日々を思い出し、常子との再会を楽しんでください。 今回初めてご覧になる方は、彼女の芯の強さや優しさに触れ、きっと魅了されるはずです。 どうぞ、じっくりとご視聴ください。

パンチです

最後までご覧頂き有難うございました
本当に素敵な人物ですね、鎭子さんは!
是非皆さんも再放送を楽しんで下さいね

ピーチです!

また見に来てね~💛
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