2025年5月8日、京都市の八百屋「Green Smile」が破産手続きに入りました。 負債総額はGreen Smileだけで約7億5000万円、関連会社のNEXTINNOVATIONは調査中とのことです。
東京商工リサーチ社によると、同社はコロナ禍の2022年1月には京都北山に「京の八百屋 菜珠(さいじゅ)」北山店、同年9月には「京の八百屋 菜珠」烏丸店を相次いで開業。日本一おしゃれな八百屋をテーマに、健康に関心の高い消費者層をターゲットとし、新規出店効果もあって2022年6月期は売上高約3億2000万円、2023年6月期は4億5947万円を計上したそうです。
「お客さまファースト」を掲げ、対面販売や産地直送を通じて高品質な野菜を提供してきた、順調そうに見えたあの店舗が消えてしまう──。 その背景には何があったのか? そして、なぜ品質にこだわる企業が消えていくのでしょうか?
その真実に迫ります。
Green Smileとはどんな会社だったのか?
固定概念を打ち壊し、その先へ。
まだどこにもない「NEO八百屋」スタイル。季節外れの野菜が陳列棚を彩り、有名メーカーの商品が派手に並ぶ大型スーパー。キレイで便利、でもそこには季節感や、作り手の顔・売り手の声がない…そんな現状に風穴をあけるのが、わたしたちの仕事です。お客さまの「ほしい」をいかに迅速に実現するか、ニーズを越える+αの提案力があるか。有名ではない小さなお店の商品も、良質なものだけを少量生産する農家さんの果物も、「本当に美味しいもの」を発掘してブランディングする目利き力があるか。そんなアツイ想いを原動力に日々前進する、わたしたちはそんな「NEO八百屋集団」です。
Green Smileホームページより引用
橘佳慶氏が2012年5月に立ち上げたGreen Smileは、元々彼が勤めていたスーパーマーケットでの「効率や利益を重視する」という風潮に疑問を抱き、その常識に風穴を開けることを目指して設立された会社です。
「NEO八百屋スタイル」と銘打ったそのコンセプトは、業界の風雲児のような存在感を漂わせています。
- 季節外れの野菜を排除し、旬のものにこだわる販売方針。
- 最も美味しい旬の時期に、最適な産地で育まれた野菜や果物を新鮮なうちに提供。
- その日仕入れたものはその日に売り切る。
理想に満ちたこの小売店の姿は、一見すると革新的に見えるかもしれません。しかし、実際には「地産地消」を掲げるJA産直市場のようです。
ところで私が生産者として出荷していたJA産直市場では、朝9時の開店と同時に大勢の消費者が集まり、最初に売り切れるのは、「安いB級品」でした。これらは通常のスーパーでは規格外となり、販売できない品々です。多くの消費者は商品の品質ではなく、値札ラベルだけを見ているのです。
Green Smile社の公式ホームページを確認すると、彼らはその消費者ニーズを見誤っていたことがうかがえます。
高い理想だけで生き残って行くのは至難の時代なのです。
多くの消費者が求めるのは「安さ」なのですから、それを扱わないお店は淘汰される運命なのです。
今の時代のお客様ファーストとは
Green Smileの公式ホームページを確認すると、3軒の直営店の写真が掲載されています。最初の写真は、2018年5月にオープンした「サンクスマルシェ Green Smile本店」。
こじんまりとした佇まいで、店の外には平積みされた新鮮な野菜が並び、まるで道行く人の購買意欲を引き出すかのようです。







引用元:Green Smile公式ホームページ
続いて2枚目と3枚目の写真は、新型コロナウイルス感染拡大により飲食店向けの販売が低迷する中、「引きこもり需要」をターゲットに新たにオープンした店舗です。
しかし、特に3枚目の写真、2022年7月にオープンした「京の八百屋 Green Smile」は、その外観がまるで高級ゴルフ用品店やキャンプ用品店のように見えます。
高級感を意識したデザインは、従来の「地域密着の八百屋」とは大きく異なり、まるで別業態のようですが、これがGreen Smile社のコンセプトなのです。
この新店舗の開店により、2023年6月期の売上は4億5947万円と前年比43%アップを達成しました。
しかし、急成長の裏側ではコストが増大し、店舗維持費や人件費が経営を圧迫したのは間違いありません。
結局、2022年に開業した新店舗や本社社屋のオープンからわずか3年を待たずに破産という結末を迎えました。
美しい新店舗は、Green Smileの「成長」を象徴する存在でした。
しかし同時に、それは「倒産の象徴」でもあったのかもしれません。
まとめ:Green Smile社の倒産から学ぶべきもの
Green Smile社の橘社長の当初の志は素晴らしかったものだと思います。
次々と良いものが売れて、生産者からも喜ばれ、お客様からも喜ばれる中で店舗が拡大したのでしょう。
不幸にも訪れたコロナ禍で飲食店向けの販売が落ち込んだタイミングで全ての歯車が狂ったというよりも、馬脚を現したかのように見えます。新店舗オープン効果で売上こそ増えていたようですが、資金繰りは火の車だったのです。
岡山県・大阪府の赤字スーパーの買収、そして新本社社屋の建設、そして倒産直前まで店長候補をHP上でリクルートしていたことから伺える更なる出店予定、飲食店の低迷・倒産が相次ぐ中で、Green Smile社のこの強気の戦略は完全に裏目に出たということです。
業態は違いますがワールドファームの凋落と極似していませんか?
小売業も農業と同じく利益が出にくい業種ですから「効率・利益を重んじる」という体質でないと不測の事態が起こった途端に窮地に追い込まれてしまうのです。
一方で現在飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している「業務スーパー」を運営している「神戸物産」は完全にその勝ち組です。多少の品質逸脱による製品回収トラブルに店側も客側も目をつぶり、安かろう悪かろうで潤うビジネスモデルを、今、私たちが生きている時代は求めているのです。
追記 2025年5月14日 閉店直前の関連会社「アカシヤ」の様子
おととし2023年11月にGreen Smile社が買収した大阪のスーパー「アカシヤ」の閉店前の状況について、Yahoo!ニュースの読者コメントで寄せられてましたので紹介します。



- 品揃えの悪さ: 「品揃えが悪く、店内の印象も暗いので、何も買わずに別の店に行った」という声。
- 運営体制の変化: 淡路の店舗では2階が閉鎖され、レジは店長らしき人が一人で対応。店先には「現金取引のみ」の張り紙。一目見て「ヤバい」と感じたとのこと。
またABCニュースもアカシヤ利用客が感じた「閉店の兆し」を生々しく伝えてます
- 商品の入荷停止: 「パンが1週間以上ない」「卵も1週間以上ない」「惣菜は2週間以上売られていない」といった情報。
- プリペイドカードの停止: 「お客さん、みんなが事前に察知してプリペイドカードのチャージをやめた」との意見。
パンや卵、惣菜の入荷停止について情報を寄せたのが従業員かどうかは定かではありませんが、利用客は他の店舗を利用できるとしても、従業員は厳しい環境で働き続けたことを思うと胸が痛みます。
転職市場が活況な若い世代に比べて、同世代の50代の方々はこれからも苦労が続くでしょう。
元従業員、全ての皆様に、新たなご活躍の場が見つかることを心からお祈り申し上げます。
追記 2025年5月14日 岡山のスーパー菜珠(菜珠)とは
こちらの記事で、「岡山県・大阪府の赤字スーパーの買収が倒産の原因」と報じられたGreen Smileの倒産要因について、岡山県では地元住民から大変残念だという声が寄せられています。
もともと、このスーパーは2020年にGood Smileに買収される前、「玉野市の老舗スーパー『タマヤ』」として地域に親しまれていました。その後、ブランド名を「菜珠(さいじゅ)」に改名し、買収後の展開が倒産の原因の一つとされています。
👉【破産】玉野のタマヤを買収した(株)Green Smile(京都)が破産申請へ – オカマニブログ(岡山マニア)
時代の波に翻弄され、地域に根付いていた老舗が消えていく寂しさを感じさせるニュースです。




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